月額280円で駅の傘「使い放題」なのに返却率は99% 設置場所が増えている「アイカサ」の正体:開始2年で800カ所に設置(2/3 ページ)
日本で年間に消費される傘のうち約6割にあたる約8000万本がビニール傘だとも言われている。気軽に購入できる分、紛失したり壊れたりしても、特に気にしない人も多いのではないか。そこに商機を見いだした企業が注目を集めている。Nature Innovation Group(東京都渋谷区)が運営する、傘のシェアリングサービス「アイカサ」だ。
まずは駅を中心に展開、今後はオフィスビルや商業施設にも
サービスを開始するにあたって同社は、東京・渋谷を中心とした50カ所にスポットを設置。さまざまなシーンに応じ、どの場所が多く利用されるか使用状況を確認した。その結果、最も利用率が高かったのが駅だったという。
そこで同社はJR東日本や小田急電鉄など主要な鉄道会社と提携。20年11月の時点で、東京駅や品川駅、新宿駅など山手線20駅にスポットの設置を完了した。その後も設置場所の拡大を進め、同年12月には三菱地所と提携し、大手町・丸の内・有楽町エリアにある9棟のビルでトライアル展開を開始している。
アイカサの利用料金は24時間で1本あたり70円(税込、以下同)。月額280円で使い放題のプランもある。500円ほどのビニール傘を買うよりも安く壊れにくい傘を利用できる点が魅力だ。
傘の貸し出しサービスと言えば、以前は自治体などが中心となって無料で行われていた。しかしその多くで傘が返却されなかったり、壊れたまま放置されたりと利便性や持続性に問題があった。だが、アイカサのサービスでは99%以上の返却率を誇る。「根本的に、ユーザーの決済情報を登録している点が大きい。借りっぱなしだと追加で料金が発生するため、それだけで99%の返却率を保っている」(丸川氏)
借り続ける場合は1カ月の最大料金である420円が毎月徴収されるが、中には使い放題プランを活用して「借りっぱなし」のユーザーもいるのだとか。「傘は1人2本まで借りられるので、家の傘を持っていない人がアイカサを『My カサ』として借りっぱなしにしている人もいる。外出中に雨が降ってきたら、街中のスポットでさらに1本借りるという使い方をする人も多い」(丸川氏)
また同社は、傘自体の品質にもこだわっている。提供する傘は国内のメーカーが手掛けた壊れにくい傘を採用。仮に壊れた場合でも部分的な修理が可能なのだとか。当初は処分されるビニール傘の再利用も検討したが、耐久性や見た目、再生できる本数に限りがあることなどから”再生可能な傘”を提供することにしたという。
そのため、紛失した場合は手数料として864円が発生するが、破損した場合は手数料を徴収していない。同社によると、これまで破損したケースはほとんどないという。
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