出社率100%→50% オフィスレイアウトの変更例 社員が「オフィスに行く理由」を考慮せよ:【前編】新時代のオフィスレイアウト(2/2 ページ)
コロナ禍で在宅勤務やテレワークの導入が進みました。オフィスをこの先も持ち続けるのであれば、変化し続ける時代の中で「オフィスにしか提供できない価値は何か」という問いについて考えることが大切です。本記事では、オフィスが社員から求められる場所であり続けるようにするための“空間デザイン”を、レイアウト例を元に紹介します。
Case2:ウィズ/アフターコロナのオフィス(出社率50%)
新型コロナウイルスの影響やABWの浸透により、出社率は平均して50%ほどと想定します。適切な距離を保つため、一人当たりの占有面積は14平方メートル、座席数は40席のオフィスデザインです。
大人数が収容できる会議室は極力減らし、ソロワークやweb会議に使える個室を増やすことで、さまざまな状況に即した使用ができるようにしています。
また、これまであまり考えてこられなかった「居心地の良さ」を最大化すべく、カフェスペースの在り方も再考しています。
4.感染症対策としてのレイアウト
上記のレイアウト例でも取り入れていたソーシャルディスタンスの確保、物理的接触の回避などの感染症対策は、できるところから始めてみるのも良いでしょう。
感染症対策目的だけでなくその先の未来も見据えて、オフィス空間内でも社員が「環境を選べる」状態にあることが重要です。
(1)席を間引き、一人一人の距離を保つ
(2)席と席の間に仕切りを設ける
(3)座る向きを変える
(4)少人数用の個室を充実させる
(5)可動式家具を利用する
(6)フリーアドレス制にする
5.オフィスだからこそ得られる体験を作る「仕掛け」
オフィスだからこそ得られる体験とは、セットされた時間や直接的な交流に限らず、偶発的・間接的に享受するものも多く含まれます。そんな体験を生まれやすくする「仕掛け」が、これからのオフィスには求められています。
集中したい時、発散したい時、誰かの力を借りたい時……さまざまな状況に合わせて、居場所が選べることが重要です。そしてハード面が整備された良環境なオフィスの中でも、自宅リビングのようくつろげるスペースがすぐそばにあることも欠かせません。
全社員共通の居場所だからこそ得られる「交流」の部分と、自宅のような「居心地の良さ」のハイブリッドが実現できれば、オフィスは唯一無二の空間となります。
文化の醸成、事業の推進、アイデンティティーの確立など、目に見えないけれど企業にとって大切なものに派生していくきっかけが、オフィスの空間デザインでできる「仕掛け」なのです。
6.企業と従業員がメリットを享受できる空間へ
今後、働く場所の選択肢はどんどん広がっていくでしょう。自宅やパブリックスペース、オフィスなどそれぞれの場所に優劣があるわけではありません。それぞれの場所に、それぞれの「選ぶ理由」があるからです。
そのような中でも社員の交流を保ち、企業の文化を醸成するため、人々がオフィスを働く場所として選択したくなるような理由づけが求められているのです。
- 従業員がオフィスに求めるもの
- オフィスにしか提供できない価値
- オフィスが生み出す可能性
これらの問いかけにいま一度向き合い、変化し続ける現代において「会社とは何か」「自社らしくあるために必要な機能は何か」を考えた先に、各社のオフィスのあるべき姿が見えるでしょう。
記事の後編では、実際に出社率50%を想定してオフィスの移転を行った企業の事例を紹介しながら、「オフィスにしかない体験の提供」ができるレイアウトについて解説します。
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