「週休3日」は本当に実現できるのか ネット上で評判が悪い理由:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
新型コロナの感染拡大に対応するため、自民党が 週休3日制を提言する方針であることが明らかになった。賃金がそのままで休みが増えれば、ビジネスパーソンにとって“うれしい”ニュースになるわけだが、ネット上では評判がよくない。なぜかというと……。
残業規制も守れない段階での議論は拙速
もっとも、一つの仕事を複数の社員でシェアし、1人当たりの賃金を減らす代わりに雇用を維持するやり方はワークシェアリングと呼ばれており、欧州では一般的である。不景気のときには、ワークシェアリングを行って労働時間と賃金を減らすことによって全員で苦労を共有し、大量解雇を防いでいる。
仮にこの制度を多くの企業が導入すれば、国全体としては雇用維持の役割を果たす可能性もある。だが経営者から見ると、総人件費を削減できるので一種のリストラ策であることに変わりはない。
18年に働き方改革関連法が施行され、日本でもようやく厳しい残業規制が行われるようになった。大企業の残業はかなり抑制されたものの、中小企業を中心に一部の企業では、相変わらず違法もしくは違法ギリギリの残業が行われている。
まずはこうした労働法制を守らない企業をなくし、既存の法律の範囲で適正な労働を促すことが先決であり、その対策も十分に行われていないうちから、週休3日制について議論するのは順序が違うだろう。単なるコスト削減策であるとの批判を受けないためにも、政府は既存の労働法制順守を企業に対して徹底指導すべきである。その上で、多様な働き方の実現において週休3日の制度が必要であれば、あらためて議論すればよい。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に「貧乏国ニッポン」(幻冬舎新書)、「億万長者への道は経済学に書いてある」(クロスメディア・パブリッシング)、「感じる経済学」(SBクリエイティブ)、「ポスト新産業革命」(CCCメディアハウス)などがある。
関連記事
- 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。 - なぜ、あの人は「稼ぐ力」があるのか? 1万分の1の存在になる方法
「稼ぐ力」というフレーズが注目されているが、どうすればいいのかなあと感じている人も多いのでは。リクルートでフェローとして活躍し、その後中学校の校長を務めた藤原和博さんに“稼ぐ方法”について聞いてきた。 - 「70歳まで会社にしがみつく人」が結局、会社を弱体化させてしまうワケ
定年を引き上げるニュースが相次いでる。現行の60歳から65歳にする企業が増えてきているわけだが、筆者の窪田氏はこの動きに懸念を抱いている。「長く働くことができていいじゃないか」と思われたかもしれないが……。 - 「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.