マツダの第6世代延命計画は成るか?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/7 ページ)
マツダはこのFRのラージプラットフォームの開発をやり直す決意をして、発表予定を1年遅らせた。ではその期間をどう戦うのか? マツダは第6世代に第7世代の一部構造を投入してレベルアップさせながらこの遅れ分をカバーしようとしている。キーとなるのが、17年に第6世代の最終モデルとして登場した、マツダ自身が6.5世代と呼ぶ2代目CX-5である。
ラージプラットフォームの延期
さて、マツダはコモンアーキテクチャー戦略がスタートした12年の翌年、13年から18年にかけて、順調に生産台数を伸ばし、200万台メーカーへ届く流れに見えていた。実際は19年に下降に入り、20年にはコロナの影響でさらに厳しいことになっているのだが、そこは計画立案より後の話だ。
200万台になると少し話が変わってくる。もともとコモンアーキテクチャーの推進に際しては一つの前提があった。単一車種専用の製造ラインを作るには車種あたりの生産台数が少なすぎたという点だ。1ラインをフル稼働させると、必要台数以上ができてしまう。だからラインをフレキシブルにして、混流生産が可能な方向を探った。これはつまり、ファミリアをまとめて作り、ある台数でカペラに切り替え、しかる後にまたセッティングを変えてルーチェを作るというやり方ではなく、全ての車種を順不同で流してしまえるやり方だ。
一切の切り替えなしで、Mazda2の次にロードスターが、その次にはCX-5が流れてくるという具合に、何でもござれの生産を行えるようにした。そのために基礎部分を同じにして、ラインでシャシーやエンジンを固定する台座の固定用アンカーの形状と位置を全車種共通にしたのである。
ある時、トヨタの生産技術者にこの話をすると「ライン側はいいのですが、部品を供給する棚は一体どうなっているんですかね?」といぶかしんでいた。これはそのうち取材しようと思っている。
さて、話は元に戻って、つまり生産台数が少ないが故に苦肉の策として考案された側面もあるコモンアーキテクチャーなのだが、200万台規模になると少し話が違ってくる。何も全部混流生産でなくても良くなってきたのだ。全てを共通化するためには、やはり窮屈(きゅうくつ)になっている部分もある。それはやむを得なかったのだが、せめてラインを大小2種に分けられれば、窮屈さを緩和できる。
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