「出勤者7割削減」なんて無理な呼びかけは、やめたほうがいい理由:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
政府や自治体が喉を枯らして「出勤者7割削減」を呼びかけている。しかし、筆者の窪田氏は「『出勤者7割削減』の呼びかけもやめたほうがいい」と考える。なぜかというと……。
弱い立場の人たちを「活用」
大企業に勤める人から「ウチの会社は出勤は週一回くらい」なんて話をよく聞くように、大企業は「出勤7割削減」という目標に向けて着々とテレワークを普及させているイメージが強いだろう。実際、パーソル総合研究所が昨年夏に行った調査でも、政府による緊急事態宣言が再発令された場合、従業員が100人以上の企業では7割超がテレワークを認める方針だという。
ただ、この高い出勤削減率は、弱い立場の人の犠牲の上に成り立っている可能性がある。
一般社団法人日本人材派遣協会が2020年9月から11月の間に、「現在、派遣で働いている」と回答した4013人を対象に調査をしたところ、「テレワークで就業したことはない」と回答した人が71.8%に及んでいる。もちろん、この中には、医療や製造などテレワークが難しい業種の人もかなり含まれているわけだが、注目すべきは「オフィス系(デスクワーク中心)」の派遣労働者でも、64.7%が「テレワークで就業したことはない」と回答をしていることだ。
実際、筆者もこの調査結果にうなずくような光景を何度が目にしている。昨年、「今、ウチはほとんどテレワークなんで」という大企業にいくつかお邪魔した。確かにオフィスはガランとしているが、受付の女性やセキュリティ、郵送作業、電話対応などをしている人たちがかなりいらっしゃった。そこで、「意外と出勤してますね」と言うと、だいたいこんな答えが返ってきたものだ。
「今日いるのは、派遣の人とかが多いので」
当たり前の話だが、数百人、数千人が在籍する大企業の巨大オフィスをまったく「留守」にできるわけがない。しかし、今のご時世、社員の出勤はなるべく削減しなくてはいけない。そこで、派遣やアルバイトの方たちはいつも通りに出勤させて、社員は自宅からリモートで指示を与えて、なるべくいつも通りにオフィスを稼働させているのだ。
もちろん、「ウチは大企業だが、派遣の方たちもみんなリモートだ」というケースもあるだろう。しかし、「ウチは定時退社、有休消化率100%のホワイト企業です」と言いはやすような大企業が、実は派遣社員や外部の下請けに過重労働を強いているケースは少なくない。世間に胸を張るような目標数値達成のため、弱い立場の人たちを「活用」するのは、大企業では驚くような話ではないのだ。
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