「出勤者7割削減」なんて無理な呼びかけは、やめたほうがいい理由:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
政府や自治体が喉を枯らして「出勤者7割削減」を呼びかけている。しかし、筆者の窪田氏は「『出勤者7割削減』の呼びかけもやめたほうがいい」と考える。なぜかというと……。
ホウレンソウとテレワークは水と油
今ですらこんな有様なのだから、もし「出勤7割削減、厳守すべし」なんておふれが出たら、出勤を断れない派遣社員や契約社員などの負担が増えることは間違いない。弱者の犠牲の上に成り立つ「出勤者7割削減」など、ブラック労働を助長するだけだし、感染対策的にもなんの意味もないのだ。
ただ、その一方で、このような人たちのがんばりで、在宅勤務が増えた正社員もこれでハッピーなのかというとそうではない。それが(3)の「『テレワークうつ』などのメンタルヘルス問題が急増する」だ。
一橋大学経済学研究科の原泰史特任講師ら「組織学会」の経営・経済学者18人とHR総研が共同で実施した調査によれば、コロナの影響で、従業員の一部または全員に対してテレワークを開始した企業は84%もあったが、一方で「仕事上でのストレスを抱える従業員が増えた」と考える企業も59.8%に及んでいるという。
俗にいう「テレワークうつ」が増えているのだ。満員電車からも解放され、ウザい上司の冗談に愛想笑いをする必要もない。好きなときに、好きなように働けると喜ぶ人がいる一方で、日本のオフィスワーカーの中には「早く出社したい」「対面じゃないと無理!」と胃をキリキリさせている方もかなりいるわけだ。
なぜこんなことになるのか。いろいろな理由が考察されているが、筆者がその中でも有力だと感じているのは、「ホウレンソウ」(報告・連絡・相談)だ。
この1980年代に提唱されてから社会人の常識となっているホウレンソウができない社員は、問題児どころか社会不適合者のレッテルを貼られるのは、皆さんもご存じの通りだ。しかし、同じことを外資系企業でやるとほぼ100%、上司から「なんでそんなどうでもいいことまで報告するの?」「それくらい自分の頭で考えられないの?」と嫌味を言われる。大学まで出た成人に対して、会社の上司が過保護の親のように「ハンカチ持った?」「門限があるから早く帰ってきなさい」なんて管理下に置きたがる働き方は、実は世界では少ないのだ。
そんな日本の特徴的な労働者カルチャーが、テレワークの普及をはばんでいるのではないか、と筆者は考えている。ホウレンソウとテレワークは水と油というほど相性が最悪だからだ。
日本能率協会マネジメントセンターが新入社員とその育成に携わる上司や先輩社員1502人を対象に行った「イマドキ若手社員の仕事に対する意識調査2020」によれば、報告・連絡・相談をするのに、有効(効果がある)と感じるものとして、「対面でのコミュニケーション」を選んだのは、71.8%にのぼった。この傾向は、新入社員(71%)、上司、先輩(74.9%)ともに変わらない。
つまり、日本のサラリーマンの多くは、「テレワーク」は「ホウレンソウ」に向かないと考えているのだ。
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