「100億円プレーヤーはもう飽きた」変わり続けるバルミューダの野望:家電メーカー進化論(5/5 ページ)
2020年12月16日には東証マザーズに上場したバルミューダ。前回はクリーナーを軸に、製品の開発工程や同社ならではのスピード感、デザインへのこだわりについて紹介した。今回は、同社が上場を目指した目的、上場後の未来と野望について、代表取締役社長の寺尾玄氏に語っていただいた。
ロケット製造レベルのスケールを目指したい
――当初の上場目的を達成した今、今後どうしたいと考えているのか。
例えばバルミューダでは、製品の生産を外注している。そのため今後は、生産工場の管理をきちんと行うなど、具体的なプランもいろいろと考えている。しかし具体的な項目ではなく、大きな目標をというのなら、とにかく会社のスケールを大きくしたい。
今期のバルミューダの売上高は約120億円と予測されているが、バルミューダは、100億円という規模では終わらない会社だ。自分もそろそろ100億円レベルには飽きてしまってもいる(笑)。自分たちのポテンシャルを鑑みれば、現状の売上高や業績より、もっと大きなことができると思っている。
――スケールを大きくするとは具体的にどういったことか。
自分はバルミューダの前身となる有限会社バルミューダデザイン時代に、ノートPC用の冷却台やLEDデスクライトを開発・販売していた。そして、そういった過程があって初めてGreenFanという家電を作ることができた。この過程を経ずに創業後にいきなり家電を作ろうと思ってもできなかっただろう。同じように会社のスケールが足りないために、やってないことや諦めていることがたくさんある。
例えば、自分は車が大好きなのだが、そういう人間に生まれたからには将来は車の1台くらいは作りたいという夢がある。とはいえ、車を作りたいとかロケットを作りたいとか、あるいは飛行機を作りたいと思っても、今のバルミューダの会社スケールでは難しい。バルミューダが上場企業になった責任もあるのでうかつなことは言えないが、今はその具体的には言えない「自分が将来やりたいこと」に向かって動き出しているところだ。
――今回のバルミューダ上場について感じたことがあれば。
これは何度も言っているが、上場したことによって社会的な責任は大きく増えたと思っているし、我々に投資してくださる株主に対する責任もある。ただ、勘違いしてほしくないのは、責任と自由は等価だということだ。
今回の上場により資金調達面などの自由度はかなり高くなり、上場前よりできることはむしろ増えた。特に、わが社の社員に伝えたいのが「社会的責任が増えたからといって、かしこまるのは大間違いだ」ということ。株主を始め、誰もバルミューダという会社にそういったことは望んでいないはずだ。
バルミューダは安定することに逆らい、常に変化する会社だ。会社にしろ人にしろ、意識して逆らわなければ、時代と同じ方向、歩調で同じように動き、予定調和になってしまう。あえて「逆に行こう」とは言わないが、バルミューダなら斜めには行けるはず。だから、今後はいかに斜めに行くかを、まずは私が皆に見せたいと思う。
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