「100億円プレーヤーはもう飽きた」変わり続けるバルミューダの野望:家電メーカー進化論(4/5 ページ)
2020年12月16日には東証マザーズに上場したバルミューダ。前回はクリーナーを軸に、製品の開発工程や同社ならではのスピード感、デザインへのこだわりについて紹介した。今回は、同社が上場を目指した目的、上場後の未来と野望について、代表取締役社長の寺尾玄氏に語っていただいた。
強い組織でさらなる成長を目指す
――開発方法に大きな変更を加えたことで、問題は起きなかったのか。
もちろん、段階的なプロセスを急に導入したことでさまざまな弊害があった。なんといっても、従来のようにプロセスを並行して開発できないので、どうしても開発スケジュールが延びてしまう。そうなると、もちろん予算もオーバーしてしまう。さらに場合によっては、売ることもできなくなる……。
このため、段階的プロセスの導入初期は「各プロセスはきちんと守ろう」と言いつつも、開発が進まないので、私の特別裁量で通してしまっていた。現在のような開発プロセスを徹底できるようになるまで2〜3年かかっており、実際にうまく回せるようになったのは昨年(20年)からだ。
売上高の推移を見るとよく分かるのだが、GreenFanの販売を開始した10年は2億5000万円で、そこから8年ほどで100億円を達成した。だが100億円から3年ほど経った現在は、だいたい120億円ほどで、今までの伸び率と比較すると3年かけて20億増というのはあまりにも変化がない。2割伸びればすごいという声もあるが、自分としては非常に不満のある数字だ。だが実は、この伸び悩んでいる3年間でバルミューダは強い組織をつくるための下地をつくっていた。
そもそもバルミューダというのは、設立当初から積極的にチャレンジをしてきた会社だ。そして、上場後もこのチャレンジ精神は変わらないし、チャレンジしなければバルミューダではないとも思っている。
とはいえ、チャンレンジというのは転びやすいものでもあるので、常々こういったプロセスや組織による「転びにくい環境づくり」は必要だと考えていた。そして、この組織づくりに一区切りつけられたのが、20年12月のIPOの時期だ。正直、驚くほど良いタイミングで上場できたと思っている。
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