「100億円プレーヤーはもう飽きた」変わり続けるバルミューダの野望:家電メーカー進化論(3/5 ページ)
2020年12月16日には東証マザーズに上場したバルミューダ。前回はクリーナーを軸に、製品の開発工程や同社ならではのスピード感、デザインへのこだわりについて紹介した。今回は、同社が上場を目指した目的、上場後の未来と野望について、代表取締役社長の寺尾玄氏に語っていただいた。
――「当初の目的」ということは、現在は品質管理の強化を目的としていないということか。
実はバルミューダは直近3年間、商品の開発をしつつ、「会社」を作ることにも注力していた。自分が会社の中心人物であることは変わらないが、従来の「1人のパワーで突破する」スタイルから、「チームで力を合わせる」スタイルへと変化してきている。そして、続けてきた組織力の強化により、当初の上場目的だった品質管理については、すでに他社に負けないレベルになったと自負している。
――具体的にはどういった点を強化したのか。
一番分かりやすいのは、初期のような勢いで製品を開発するのではなく、開発プロセスに段階を設け、それぞれの段階に目標を設けたことだ。現在は1つの製品を開発するのに「コンセプト」「プロトタイピング」「量産設計(3段階)」「量産立ち上げ」「量産安定化」など、工程が厳密に細分化されている。それぞれで達成すべき目標があり、かつ、それぞれの段階でクリアすべき項目が決まっていて、各部門の責任者のOKが出ないと次のステップに移行できない仕組みだ。
製品の製造や販売に伴うリスクに関しては、コンセプト段階でできるだけリスクを洗い出す作業をしている。例えば、トースターなら「特定の条件が揃うと燃える可能性がある」とコンセプト部隊がプロトタイプ部隊に引き渡すと、プロトタイプ部隊は試作品を作って実際にその条件でテストをし、「本当に燃えることを確認しました」といった具合で、その事実を元に、初期段階で製品を改良する。とにかく、できるだけ開発の初期段階でリスクをつぶせるように開発方法を工夫している。
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