JR東日本、「新幹線リモートワーク」でマスキング音など提供 集中できる空間づくりで連携:専用車両を設置
JR東日本は、新幹線の車内にWeb会議も可能なリモートワーク空間を設ける実証実験について、利用者に提供する体験ツールを発表。集中して効率的に仕事ができるように、外部企業と連携する。実験は2月に東北新幹線で実施する。
JR東日本は1月26日、新幹線の車内にWeb会議も可能なリモートワーク空間を設ける実証実験について、利用者に提供する体験ツールを発表した。集中して効率的に仕事ができるように、外部企業と連携して空間をつくる。実証実験で得られた知見を今後の「新幹線オフィス」開発に生かす。
実証実験は、2月1〜26日に実施(土休日を除く)。前半の2月1〜12日は、午前7時56分東京発「はやぶさ103号」など、東北新幹線1日4往復(8本)で実施。後半の15〜26日は、午前8時8分東京発「やまびこ127号」など、1日5往復(10本)で実施する。
「リモートワーク推奨車両」を設定する号車は列車によって異なるが、1号車の場合は15席、4〜6号車のどこかに設定する場合は42〜57席を用意する。座席指定はないが、仕事に集中する空間をつくるため、B席とD席は使用不可とし、間隔をあけて利用してもらう。
車内で体験可能なツールは4種類。Wi-FiルーターはKDDIが提供する。個別のルーターを無料で貸し出し、快適な通信環境で仕事をしてもらう。
仕事や会議に集中できるようにするためのツールも提供する。リモートワーク推奨車両内には、ヤマハのスピーチプライバシーシステム「VSP-2」を設置。車内で「情報マスキング音」を流すことで、Web会議などの際に、周囲に会話が漏れ聞こえてしまうことを防ぐ。会話内容を聞かれる漏洩リスクと、会話が聞こえることによる業務の妨げを軽減し、より仕事に集中できるようにする。
また、眼鏡ブランド「JINS」を展開するジンズホールディングスの子会社、Think Labも、集中状態を測定するウェアラブルデバイス「JINS MEME」を提供。3種類のセンサーによってまばたきや視線移動を計測し、集中状態を専用アプリで可視化する。
加えて、富士フイルムがアルコール除菌シート「Hydro Ag+クロス」を提供。座席やテーブル、レンタル機器を除菌するのに使用してもらう。
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