JR東が抱く“未来への危機感” 終電繰り上げ・定期券値上げ検討の背景とは?:ライフスタイルの変化に対応(1/4 ページ)
JR東日本が終電時刻を繰り上げることを発表して話題になった。コロナ禍で深夜の利用者が減り、ライフスタイルの変化は元に戻らないと同社は見ている。定期券サービスの見直しも含めて、鉄道の未来への危機感が現れている。
電車に乗っている人が減ったなあ、と思う人も最近では多いだろう。通勤ラッシュの時間帯はコロナ禍以前よりも人が乗っていない印象を受け、それ以外の時間帯は割と座れる。そもそも夜遅い時間帯の列車には乗ることがなくなった、という人もいるのではないだろうか。
そんな中、JR東日本が驚きの発表をした。
なぜ終電は繰り上がるのか
9月3日、JR東日本の深澤祐二社長は定例記者会見で、来春のダイヤ改正から終電時刻を繰り上げると表明した。
その背景には、利用状況の変化があるという。山手線の上野〜御徒町間の利用状況は、コロナ禍以前と比べて、終日では38%減、朝のピーク時間帯(3時間)では36%減少した。もっとも、朝ピーク時間帯については混雑が緩和したということで、利用者にとってはポジティブな変化だと考えることもできる。時間帯によっては、窮屈すぎるというのもまた確かだからだ。
一方で、深夜帯の利用状況は大きく変化した。コロナ禍以前に比べて、66%減となった。
そもそも近年、「働き方改革」の影響で残業が減ったり、職場や大学サークルの飲み会が1次会で終わりになったりと、深夜まで人が出歩かなくなってきたという状況が起こっている。そんな中、コロナ禍で残業や飲み会さえ減ってしまった。
残る深夜帯の利用者は、シフト制勤務などで夜遅い時間に帰宅しなくてはならない人たちが中心となった。こういった職場は、エッセンシャルワークの職場であり、どうしても人がやらなくてはならない仕事となっている。残る“34%”というのは、そういう利用者である。
ここまで利用者が少なくなると、鉄道事業者側も考えを変えざるを得ない。コロナ禍が収束したあとも、テレワークやECなどが社会に浸透し、人々の働き方や行動様式は元に戻らないとJR東日本は考えている。この状況で安定した利便性の高いサービスを維持するために、利用者の変化に対応することが必要だ。
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