「株式取引システムは3社くらいに収れんする」auカブコム社長、プラットフォーム化へ意欲(2/2 ページ)
自社の取引システムをAPIとして提供し、プラットフォーマーを目指すとしているのが、ネット証券大手のうちの1社、auカブコム証券だ。2012年から株式取引のAPIを開放してきたが、20年7月には投信販売機能のAPI提供を始めた。さらに8月にはREST APIを使った高速発注環境を開放、10月には先物とオプションのAPIを開放、さらに他証券会社向けに貸株サービスをSaaS形式で提供するなど、矢継ぎ早にAPI提供を進めている。
自社開発のシステムだからできた
同社がシステムをAPIとして提供できるのは、システムが完全自社開発だからだという。当初から、システムを外部に提供する構想があった。
「私はNRI出身で、証券会社向けのシステムを作っていた側。ベンチャーとして証券会社を始めるときは、口座ゼロ、取引ゼロなので何かあっても人力でなんとかできる。リスクが取れる。チャンスだから、せっかくゼロからやるならシステムを新しく作ろうと。1日100万トランザクションなんてなると、システム移行は大騒ぎでそうはいかない。
自社開発なので、最初は現物株しかできなかった。競合の他社は信用取引などもできたが、どうせスタートが遅れるならオンリーワンと差別化でいくしかない。差別化要素として一番大きいのはITシステムだ。これが使えるようになったら、人様に出せるようにしていこうと考えた」(齋藤社長)
米国の金融業ではシステムを社内で作るのが当然だと齋藤社長は言う。競争力の源泉だからだ。ところが、国内だと取引APIを提供しているのはauカブコム証券だけ。これは、外部でシステム開発をやっているためではないかと話す。
機関投資家と個人の格差をなくす
もう1つ、APIがもたらす効果として齋藤社長が期待しているのが、機関投資家と個人の取引環境格差の解消だ。ネット証券登場以前は、両者の間には大きな差があった。株価はリアルタイムで確認できず、取引は電話のみ。ところが環境格差は次第に減ってきた。株価やニュース情報の格差はなくなり、Webブラウザやスマホで取引できるように。手数料もほとんど同じになった。
ただし最後に残っている差がITだ。「プロで、手で発注するディーラーなんて1人もいない。画面のボタンを押している人なんてゼロ。全員システムトレードだ。そうでないと負けるから。日本においても、APIを活用することで個人がだんだん機関投資家を追い抜くと思う」(齋藤社長)
FXや仮想通貨取引ではAPIが整備されており、MT4などの自動売買システムを使いシステムトレードをするのが一般化してきている。株式でも、APIが普及すればシステムトレードを行うパワーユーザーが参入してくると見る。
同社の個人向け株式APIの利用者は、50人〜100人程度だというが、売買代金シェアでいうと株式全体の1%〜2%を占めるという。「個人がヘッジファンドと同じやり方でもうかるかるようになれば、どんどん広がるのではないか。個人向けAPIにすごく期待している」(齋藤社長)
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