小売業の倒産、30年間で最少 20年は14%減、“巣ごもり”需要拡大:「飲食料品」は2割減
東京商工リサーチはによると、2020年の小売業の倒産件数は前年比14.3%減の1054件だった。新型コロナウイルス感染拡大に伴う“巣ごもり需要”が拡大。1991年以降の30年間で最少の倒産件数となった。
東京商工リサーチは1月29日、2020年の小売業の倒産件数(負債1000万円以上)が前年比14.3%減の1054件だったと発表した。19年まで2年連続で増加傾向にあったが、20年は新型コロナウイルス感染拡大に伴う“巣ごもり需要”の拡大などで大きく減少。1991年以降の30年間で最少の倒産件数となった。
小売業の倒産は、人手不足や2019年の消費増税などを背景に、18年(1132件)、19年(1230件)と増加。しかし、20年は外出自粛の広がりによる消費動向の変化や、新型コロナ感染拡大に伴う支援策の効果などで減少。倒産件数は17年の1117件を下回り、30年間で最少を記録した。
業種別にみると、倒産件数の減少率が最も大きかったのが「飲食料品小売業」。前年比22.7%減の244件だった。その内訳は、各種食料品小売業(38.9%減、36件)、酒小売業(26.9%減、19件)、野菜・果実小売業(22.2%減、14件)、菓子・パン小売業(19.4%減、58件)。食品スーパーなどを中心に、需要拡大の恩恵が大きかったようだ。
また、「織物・衣服・身の回り品小売業」は16.5%減の197件、「機械器具小売業」は8.3%減の187件、「無店舗小売業」は7.8%減の94件、「その他の小売業」は11.6%減の326件と、それぞれ減少した。
倒産の原因は、最多が「販売不振」の854件。次いで、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」(84件)、「他社倒産の余波」(38件)だった。既往のシワ寄せ、販売不振、売掛金等回収難を合わせた「不況型倒産」は計938件となり、前年より12.5%減少した。
負債額は「1億円未満」が834件で、全体の79.1%を占めた。従業員数では「10人未満」が956件と、全体の90.7%を占めている。
20年の主な小売業の倒産は、アパレル製品販売のレナウン(負債138億7900万円)、かばん・雑貨製品販売のキャスキッドソンジャパン(同65億円)、婦人服企画販売のシティーヒル(同49億9600万円)などがあった。
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