「納豆」はキムチの牙城を崩せるか “日本食”が脅威にさらされているワケ:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
「免疫力アップ食品」としてキムチが世界で注目されている。同じく発酵食品の「納豆」はどうか。納豆を世界に向けて“日本文化”として広めていくためには、強かな戦略が必要だ。そうでないと、韓国や中国に「起源」として主張されてしまう恐れもある。
匂いを抑える「タレ」がトレンドだが……
もちろん、納豆業界としてもそのような「弱み」は重々承知しているので、各社は「匂い控えめ」をうたうなど、納豆嫌いの人でも食せるような試行錯誤を続けている。そんなトレンドの中で近年増えているのが、「タレ」を合わせることで、納豆のクセの強さを中和しようという試みだ。
例えば、ミツカンは20年9月1日に「金のつぶ ご飯に合う濃厚焼肉タレで食べる旨〜い極小粒納豆」「金のつぶ ご飯に合う濃厚生姜焼タレで食べる旨〜い極小粒納豆」を新発売。焼肉タレのように濃い味と強い香りを合わせることで、納豆本来の匂いがかなり抑えられることができることは言うまでもない。
この他にも、各メーカーが「昆布ダレ」「たまご醤油たれ」「まろやか昆布だし」などさまざまな風味のタレをつけた商品を企画し、「納豆のクセ」を弱めているのだ。ただ、世界市場を狙っていくには、個人的にはもっと効果の高いコラボがあるのではないかと考えている。
キムチだ。
納豆を好きな方ならば、一度はキムチと一緒に混ぜた「納豆キムチ」を食したことがあるのではないか。キムチの唐辛子によって、納豆の独特の匂いなどのクセは弱まるが、決して納豆自体の良さが消えているわけではない。ともに発酵食品ということもあって、非常に相性がいいのだ。
そんな「納豆キムチ」を、納豆の食べ方の一つとして、世界に発信してみてはどうだろう。
「免疫力アップ食品」として知られる2つの食品がコラボすれば、健康意識の高い人たちには非常に魅力的に映るはずだ。また、既に米国のスーパーなどでも売られるキムチと組み合わせることで、納豆の知名度を引き上げることができるし、納豆の弱点である「独特の匂い」をキムチで弱めることもできるなど、メリットはかなり多いのだ。
それに、「日本の食文化」だからといって、全てを“伝統”に縛られる必要はない。例えば、今や海外では日本食として捉えられている「ラーメン」だって、もとをただせば中華料理である。日本のラーメン屋が、「家系」とか「二郎系」のように独自に進化して別料理になっているように、「納豆キムチ」も、キムチという韓国食材を用いた日本独自の食文化として海外に訴求していけばいいだけの話なのだ。
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