コロナワクチン、有効率90%超えの真の意味:専門家のイロメガネ(2/5 ページ)
コロナ禍が続く状況で期待されているワクチンだが、不安と期待が入り混じった状態で正確な情報を得られず困っている人も多いだろう。医薬品の開発業界で長く働く薬剤師の立場から、有効率90%のワクチンが本当に救世主になるのか、改めて考えてみたい。
有効性90%の意味は?
現在、すでにワクチンの接種が始まっている国も複数ある。新型コロナによる感染者・死亡者が多数発生している米国では、一日当たり100万人がワクチンの接種を受けているという。
前述の「有効率90%」とは「そのワクチンを打ったら90%の人が新型コロナを発症しない」という意味ではない。「90%の予防効果」と説明しているメディアもあり誤解が生じている。
正しい有効率の定義は「発症を減少させる割合」である。言いかえると「ワクチンを受けていない場合の発症者数を100 として、その人たちがワクチンを受けていたら発症者数はどのくらい減るか? 」という意味だ。ワクチンを受けたことで発症者は100から90に減るのか、50に減るのか、あるいはもっと減るのか。これが有効性となる。
※厳密にはウイルスの「感染」と「発症」は異なる。感染はウイルスが細胞内に入り増殖することで、その後症状が出たら「発症」となる。免疫機能が高ければ、感染しても発症はしない。
ファイザーの結果
3社のうち、ファイザーの公表している臨床試験の結果を例に説明をしてみたい。
臨床試験に参加した約4万3000人を均等に2つに分けたと仮定すると(執筆時点で厳密な人数はまだ公開されていないため半分ずつとする)、それぞれ感染して発症した患者の人数は、ワクチンを打たなかったグループでは162人だが、ワクチンを打ったグループでは8人と劇的に少なくなっている。
この数字で有効率を計算すると、計算式は以下のようになる(A=Bと仮定した場合)。
- 有効率=1 −(8 ÷ 162)= 0.9506 ≒ 約95%
確かに「95%の有効性を示した」という報道のとおりだ。
参考 ファイザー プレスリリース 2020年11月19日
ファイザーとBioNTech、COVID-19ワクチン候補の国際共同第3相臨床試験ですべての主要な有効性評価項目を達成 (pfizer.co.jp)
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