なぜコロナ禍で投資を始める人が増えたのか?
なぜコロナ禍において、新たに投資を始める人が増えたのか。マネーフォワードが行った「コロナ禍の個人の家計実態調査2021」に、そのヒントがありそうだ。
コロナ禍に見舞われた2020年は、新たに投資を始める人が増加した年でもあった。ネット証券各社は大きく口座数を伸ばし、スマホ証券大手2社も相次いで50万口座達成を発表するなど、特に若年層、初心者の投資参入が目立つ。
なぜコロナ禍において、新たに投資を始める人が増えたのか。マネーフォワードが行った「コロナ禍の個人の家計実態調査2021」に、そのヒントがありそうだ。調査によると、「新型コロナの影響で、生活防衛の意識が高まった」と回答した人は全体の8割にのぼった。
そして生活防衛のために行ったことは、うち約2割が「投資を始めた」であり、約3割が「投資資金を増やした」という行動だ。過半数が、生活防衛のために「投資」を選んだということになる。一方で、これまでの傾向とは異なり、生活防衛のために貯金を始めたり、貯金額を増やしたという人は4割にとどまった。
「貯蓄から投資へ」という、金融庁が長く推進してきた取り組みは、こと若年層に限っては、奇しくもコロナ禍によって実現しつつある。
一方で、日経平均株価にとどまらず、昨今若年層に人気の米国株でも、各種指数は過去最高を更新している。銘柄によってはロビンフッダーなどと呼ばれる新たな集団が、仕手的な動きで株価を釣り上げるなど、バブル的な様相も帯びてきた。新たに投資を始めた人も、こうしたマネーゲームに乗っているのだろうか?
実はそうでもない。マネーフォワードの調査では、生活防衛のために投資を始めた人の7割が「NISA・つみたてNISA」を使って投資しており、投資先も投資信託が約5割だ。フィデリティの調査でも、ビジネスパーソンのうち、確定拠出年金の利用者は38.6%、NISAは31.8%に達しており、長期運用を前提とした何らかの非課税口座を利用している人は過半数にのぼっている。
生活防衛意識から投資に向かう行動には、公的年金への不安もありそうだ。フィデリティの調査では、8割が公的年金への懸念を示している。しかし、不安の内容は年代によって異なる。20代では28%が「制度が廃止されるので不安」と答えたのに対し、50代では56%が「給付減額で不安」だとした。
興味深いのは、自分の公的年金の給付額を知っているかどうかで、投資行動に大きな差が出たことだ。給付額を知っている人の中で投資をしている人が7割を超えるのに対し、知らない人は3割弱しか投資を行っていない。
生活防衛意識が高まった人のうち、88%が「コロナ収束後も、生活防衛を継続したい」(マネーフォワード調査)としている。コロナがきっかけで始まった長期投資のトレンドは、定着していくのかもしれない。
関連記事
- 投資をしている人が4割突破 反面、老後2000万円問題の功罪も
日本のビジネスパーソンの投資家比率が急上昇している。フィデリティが毎年行っている「ビジネスパーソン1万人アンケート」によると、2020年の投資をしている人の比率は40.5%となり、ついに4割を超えた。15年の比率は30.4%であり、5年で10ポイントも上昇したことになる。この背景には何があるのだろうか? - 数百万人が利用のポイント運用 若者の投資の入り口に
ポイントの存在感が増している。ポイントは、次の決済の際に割り引きとして使用できるだけではない。若者を中心に存在感を増しているのが、ポイントを使った疑似投資、ポイント運用だ。 - 若い人ほど早くリタイアしたい 日本人の退職準備は楽観的か
フィデリティが行った、勤労者を対象にした退職準備に関するアンケートによると、日本人の多くが、まだまだ退職後に必要な資金を楽観的に捉えていることが分かった。フィデリティ退職・投資教育研究所の野尻哲史は、「かなり甘く見ている。日本人は楽観的だ」と警鐘を鳴らす。 - 楽天証券、月間の投信積立額が350億円超に ”楽天投資エコシステム”が効果
楽天証券の投資信託積立額が月間で350億円を超えてきた。約110万人が積み立てを設定しており、前年から約2倍に。投資信託の残高は前年同期から53.3%増えて、1.5兆円を超えた。利用者の心を捉えたのは、楽天ポイントを活用した"投資エコシステム”だ。 - 米国株、若者に人気 楽天証券では投資家が数倍以上に
日本人の投資といえば日本株が当たり前だった。ところが若者を中心に、米国株取引が急増している。楽天証券によると、同社で米国株を取引する人の数は、前年比で数倍以上に増加した。その背景には何があったのだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.