パソナの淡路島移転は「島流し」なのか? 移住した副社長が感じた“思った以上のポテンシャル”とは:アフターコロナ 仕事はこう変わる(6/6 ページ)
パソナグループは、東京にある本社機能の一部を淡路島へ移転させている。移住した副社長に環境や社員の働き方がどう変わったのか聞いた。副社長は思った以上のポテンシャルを感じている。
淡路島のオフィスに視察希望が殺到
南部代表が1976年、関西大学を卒業する1カ月前にパソナ(当時、テンポラリーセンター。93年に改称)を創業したのは、「家庭の主婦の再就職を応援したい」という思いからだ。そこで、人材派遣のシステム構築と普及を目指した。
しかし、2度の大震災、そして今回のコロナ禍により、雇用が大きく失われる事態を目の当たりにし、雇用の創造に一層本腰を入れるようになってきた。その現れが、淡路島への本社機能一部移転ではないだろうか。
渡辺副社長によると、東京と淡路島では社員が出勤する際の服装も異なっている。東京では、スーツにドレスシャツ、ネクタイを締めるというのが標準。ところが、淡路島では各自が思い思いの私服で勤務している。オフィスの雰囲気も全く異なっており、ワーケーションのスタイルが浸透している。
4月に新しくオープンするオフィス棟は、ビーチサイドにあり、地中海ブルーをイメージして建設中である。
最終的には、島中にパソナのオフィス、社宅、寮、商業施設などを配置して、雇用をどんどん創出し、淡路島の人口増を目指すだろう。
ところで、淡路島のオフィスには、IT企業を中心とした大企業からの“視察希望”が殺到しているそうだ。今は緊急事態なので、視察を休止しているが、春になって新型コロナの感染者数が落ち着いたタイミングで、視察ツアーを組んで受け入れていく方針。
淡路島へのオフィス移転の輪が次々と広がり、やがては第2、第3の淡路島を目指したワーケーション適地が開発されれば、日本人の働き方は変わり、地方も活性するのではないだろうか。
これまで、日本企業の多くは東京に本社を構えることにこだわり、人々も東京の都心部で働くことに特別な意義を見い出していた。もちろん、東京からの視点も大事だ。しかし、淡路島からの視点が新しく加わることによって、企業の在り方や働き方に多様性が生まれる。
パソナの淡路島への本社一部移転は、コロナ禍が生み出した、日本の企業文化のダイナミックな変革の先駆けなのかもしれない。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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