沖縄の長年の課題「飲酒運転撲滅」と「運転代行業の適正化」 劇的に改善しそうな新サービスとは:待ち時間は60分から12分に(4/4 ページ)
Alpaca.Lab(アルパカラボ)が琉球大学と連携して開発した運転代行配車アプリ「AIRCLE(エアクル)」が、2020年8月のリリースから現在までにダウンロード数が1万弱に迫るなど、コロナ禍においても着実に利用者を増やしている。
業界自体の適正化で安定のビジネスを
エアクルは運転代行手配の時間短縮だけではなく「利用者と業者の双方への安心安全」も提供している。エアクルに参加できるのは、法的基準を満たした業者のみだ。具体的には「保険に加入している」「公的な認定を受けたという表示義務を果たしている」といったことだ。万が一の事故の際にもしっかりと対応できる。
従来型の運転代行業は、電話を待つ間に生じる時間的ロスや、過度な価格競争で収益が上がりにくいビジネス構造となっている。そのため、法令に対応する余裕がないままその日の収入を得ないといけない従業員を抱える業者もいるのが現実だ。保険に加入することができないままトラブルに発展するケースもあった。
前出の全国運転代行協会新崎理事は、業界全体の「適正化」を訴え続けてきた。運転代行業に関連する法律が02年に初めて制定されたものの、法令を順守しない業者もこれまで目の当たりにしてきた。
エアクルに参加する運転代行業者が効率的に収益を上げ、安心して事業を持続できるビジネスモデルを構築しつつあることで、新崎理事は「運転代行業界がこれからどんどん進化し、評価されていくだろうと思っています。この20年間でいくら頑張っても変えきれなかった。全国が沖縄に注目していますよ」と声を弾ませる。
アルパカラボの棚原代表は同社の理念として「課題先進県の沖縄から、課題解決のスタンダードを」と掲げる。テクノロジーと創意工夫で、人も社会もより一歩幸せに近づくきっかけを作り出している。
著者プロフィール
長濱良起(ながはま よしき)
フリーランス記者。元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、沖縄県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。同年から個人事務所「XY SUDIO」代表。記者・ライター業の傍ら、フリーのTVディレクターや音楽制作業でも活動する。1986年、沖縄県浦添市出身。
著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(東洋企画工房)がある。
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