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「女性社外取締役」が増えると、男女格差が広がる皮肉なワケスピン経済の歩き方(2/6 ページ)

オリパラ組織委員会の会長人事の議論が盛り上がるなか、民間企業では着々と女性の経営参画が進んでいる。不二家が女優の酒井美紀さんを社外取締役に大抜てきしたが、筆者の窪田氏は「女性社外取締役が増えれば増えるほど、男女格差が広がっていく」という。どういう意味かというと……。

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極めてシンプルな理由で説明

 では、なぜこんなおかしな現象が起きるのか。「そもそもこんな指数は欧米社会が高くなるようにできているものなのでデタラメだ!」という方もいらっしゃるかもしれないが、無理にそういう陰謀論的な話へもっていかなくても、これは極めてシンプルな理由で説明できる。

 エグゼクティブサーチとリーダーシップアドバイザリーの大手企業スペンサースチュアートが先進国の企業の取締役会の中で、女性取締役がどれほどいるのかという比率を調べている。それによれば、フランス、英国、米国、ドイツなどの企業では28%超であるのに対して、日本の場合は日経225社で11.0%、TOPIX100社で12.2%にとどまっている。さらに、女性取締役が30%以上を占める企業の比率に関しては、フランスが96.7%、ドイツが90%、英国が70.6%、米国が43%であるのに対して、日本の場合は日経225社では2.7%、TOPIX100社では3%と桁違いに低い(Japan Board Index 2020)。


女性取締役の比率、海外に比べて日本は低い(写真提供:ゲッティイメージズ)

 確かに、女性社外取締役を選任する企業は爆発的に増えた。が、選任する女性社外取締役はせいぜい1人とかであることに加えて、社内で着々とキャリアを積んで取締役に選任されるような女性も圧倒的に少ない。とても「ダイバーシティ」などと呼べる状態ではなく、おじさん取締役会の「紅一点」という感じなのだ。

 そのあたりは、酒井美紀さんが社外取締役に就任する不二家を見ると分かりやすい。山田憲典会長、御歳85をトップに、河村宣行代表取締役社長、66歳をはじめ、7人の取締役、取締役相談役1名、社外取締役2名はみんな男性である(2020年10月26日現在)。つまり、不二家の社内から取締役になった女性が1人もいない中で、12人のおじさん役員たちの中に、外から迎えられた女性取締役が酒井さんということなのだ。

 このような、「10人くらいのおじさんムラ社会に、女性1人をポンと放り込む」という“日本流ダイバーシティ”をいくら推進したところで、「男女格差」が解消されるわけがない。むしろ、ムラ社会に異質な存在が入ることで、強い拒否反応や排除の理論が働いてしまって、オールおじさん取締役会の時代より「男女格差」が大きく開いてしまっているのだ。

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