家族型ロボットへ出資した、日立GLSの目指す未来:家電メーカー進化論(5/6 ページ)
日立グループで家電製品の開発販売を行う日立グローバルライフソリューションズ。同社は2020年12月に、家族型ロボットの製造販売を行うスタートアップ・GROOVE Xとの資本・業務提携し、また海外家電事業をトルコの家電大手アルチェリクとの合弁会社へ移管すると発表した。同社の目指す未来を取締役社長の谷口潤氏に聞いた。
LumadaとLOVOTの連携で未来の家電はどうなる?
GROOVE Xとの提携の翌週に行われた、海外家電事業のアルチェリクとの合弁を発表した日立GLSの事業説明会では、日立グループの「Lumada(ルマーダ)」が多くのメディアや投資家の注目を集めた。
Lumadaとは、日立グループの先進的なデジタル技術を活用したソリューション・サービス・テクノロジーの総称であり、まさに、今回の取材冒頭で谷口社長の話した「消費者を理解するための入り口」ともいえるシステムだ。
現在、Lumadaの具体的な活用例としては、日立GLSの空調IoTソリューション「exiida」がある。exiidaに対応する業務用のIoT冷凍・空調機器は、運転データを継続的に送ることで故障につながる変化をリアルタイムに監視。これにより「機器が故障する前にユーザーへ知らせる」予兆診断を可能としている。
谷口社長は、「これはまだ自分の想像の段階ですが」と前置きしながらも、将来的にはLumadaの予兆診断のような機能を、家庭用の電気機器にも搭載したいと話す。
例えば、家庭にある冷蔵庫が突然壊れると、保存していた冷凍食品が溶けて廃棄せざるを得ないこともある。こういった家庭にとっての大損害を、家電とLumadaをつなげることで解消できるかもしれないとした。
「例えば、Lumadaで『あそこがそろそろ故障する』という予兆を検知すると、パーツを宅急便で送り、お客さまはそのパーツを取り替えるだけで簡単に自分で家電が修理できる。そういった未来が可能になるかもしれない。今の日本には労働者不足という社会課題があるが、この方式なら修理技術者の派遣が不要になるので消費者の利便性も高く、社会課題解決の一助にもなる」という。
さらに、こういった故障などの予兆検知をするにあたって重要となるのが、家電が置かれている環境を知ること。谷口社長によると、冷蔵庫やエアコンなどは本体単体の原因で故障するより、周辺環境が原因で壊れることが多い。
家電本体を監視するだけでは分からない、例えば湿度や温度といった家電の周辺環境は、LOVOTのようにセンサーを多数搭載し、しかも移動が可能なロボットを併用することでより正確な予兆検知が可能になるだろう。
あるいは現在のようなコロナ禍なら、家庭内を巡回するLOVOTに空気の汚れを監視させ、換気が必要な場合は自動的に換気扇を回すといった使い方も考えられる。LumadaとLOVOTを連携させれば、さまざまな家庭の課題が解決できるはずだという。
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