いま注目の自律分散型組織「ティール組織」とは何か?:コロナ禍で(2/4 ページ)
「ティール組織」は、社長や上司がマイクロマネジメント(過干渉)をしなくても、目的のために進化を続ける組織を指します。どんな特徴があるのでしょうか。
『ティール組織』の著者フレデリック・ラルーは組織の歴史を原始から現在に至るまで、次の5つの段階で説明しています。
- (1)衝動型(レッド)組織
レッド組織は、言うことを聞かないと殺す・殴るといった恐怖で集団を動かす原始的な方法論であり、ギャングやマフィアのような組織です。短期志向であり、スラムや破綻国家といった非常時や敵対的な環境に適します。
- (2)順応型(アンバー)組織
アンバー組織は、正式な階層をもつ組織でカトリック教会、軍隊、公立学校システムが例に挙げられます。指示命令系統や業務フロー等の発明があり、宗教団体や国家が発展しました。長期的目線のもと、大規模な事業を成し遂げることが可能となりました。しかし、前例踏襲と秩序の維持を重視するため、変化や競争には向きません。
- (3)達成型(オレンジ)組織
オレンジ組織は、今日最も主流となっている組織で、グローバル企業に代表されるイノベーション志向の組織ともいえます。現状を客観的に分析し、改善を行い、目標の達成に向けて働きます。科学的マネジメントの段階ともいわれ、その最大の発明が出世可能な実力主義であり、これにより飛躍的に生産性が高まりました。
しかし、出世する人とそこから外れた人の温度差、幾層にも重なる承認プロセスによる経営スピードの劣化、スキル・機能といった機械の部品のように仕事に割り振られるなかでの虚無感などいくつかの弊害も生まれています。
- (4)多元型(グリーン)組織
グリーン組織は、非営利組織のように権限移譲と多数のステークホルダーの視点を特徴とする組織です。組織内で対話の場が多く、組織文化や関係性を重視することでメンバーのコミットメントが高い組織です。
しかし、多様な価値観を大事にすることで意思決定が長引いたり、完全にフラットな組織ではないため、社長や役員などの上層部とメンバー間との溝も生まれやすくなります。
- (5)進化型(ティール)組織
F・ラルーは前述した組織に当てはまらない新しい組織の事例が世界に生まれていることを発見し、これを進化型(ティール)組織と名付けたのです。単に理想論を語ったのではなく、最低100人以上の従業員がいて10年以上経営が続いている多業種の事例を検証し、理論化したことで注目を集めました。
ティール組織の特徴は、「自主経営」「存在目的」「全体性」にあるといわれます。組織の進化の歴史との関係性をイメージすると、図表1の通りになります。
(1)「自主経営」という特徴
従来のビジネス組織では、結果責任や命令権限をもつリーダーやマネジャーを置いて、マネジメントをする階層構造の組織形態が主流でした。
しかし、いま現われつつある進化型のティール組織は様相がだいぶ変わってきます。従来の経営では階層が上がれば上がるほど権限が増え、自由な裁量で動くことができるようになりましたが、ティール組織では現場が主役です。
そもそも組織内の人間に権限の差はなく同じ立場だという前提で、あらゆる個人が自由に意思決定をしながら組織活動を進めていきます。
また、経営層が現場の代わりに組織全体のビジョンや戦略を練ったり、人事部などの間接部門が現場の代わりに採用計画をつくり、教育研修を行っていくという「代わり」に行う組織ではなく、現場と「共に」進めていく経営スタイルもティール組織の大きな特徴といえるかもしれません。
圧倒的な成長を遂げたオランダの在宅ケア組織があります。地域看護師であるヨス・デ・ブロック氏が2006年に創業した非営利の在宅ケア組織「ビュートゾルフ」は自主経営を理解するうえで非常に参考になる事例です。
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