「寿司業界」にこそ、日本経済復活のヒントがある理由:スピン経済の歩き方(1/6 ページ)
新型コロナの感染拡大を受けて、「倒産」の言葉をよく耳にするようになった。寿司店も例外ではなく、小・零細店を中心に倒産件数は高水準で推移している。「まあ、仕方がないよ」と思われた人も多いかもしれないが、筆者の窪田氏は前向きに受け止めているという。どういうことかというと……。
「倒産」「減少」「縮小」「中止」など気が滅入る言葉ばかりが、毎日のようにメディアで報じられるなかで、われわれ日本人が愛してやまないソウルフード「寿司」についても、先週こんなニュースが流れた。
「すし店の倒産が5年ぶりに増加、小・零細企業中心にコロナ禍の影響大」(東京商工リサーチ 2月17日)
東京商工リサーチによれば、2020年4月から21年1月の寿司店の倒産(負債1000万円以上)は28件で、これは前年同期比で1.6倍と高水準で推移しており、このペースで進めば、15年度以来の30件台に乗せる可能性が高い、としてこのように結論付けている。
「従業員10人未満が26件(同92.8%、同17件)と小・零細企業が9割を占め、コロナ禍の影響が資金力の乏しいすし店を直撃している実態が鮮明となった」(同上)
そう聞くと、「コロナ倒産」という重苦しい文字が脳裏によぎって、暗い気持ちになる方も多いだろうが、個人的には、言うほどネガティブに捉える数字ではないと考えている。
むしろ、これはコロナ禍のなかでもたくましく生き残っている「寿司店」の強みが浮き彫りなっている数字であり、日本経済復活のヒントにもなるような「前向きな話」とさえ思う。
なんてことを口走ってしまうと、「小・零細企業が倒産の何が前向きだ!」とか「資金難で苦しむ飲食店の辛さを知らないのか! 謝罪して撤回しろ!」というお叱りの声がじゃんじゃんきて吊(つる)し上げられそうなので、はじめに誤解を解いておきたい。
まず、筆者は「小・零細企業の倒産」が喜ばしいことだなどと言っているわけではない。町の小さなお寿司屋さんに限らず、すべての小・零細企業が倒産することなく、いつまでも事業が続けられることがいいに決まっているのは、当たり前だ。
ただ、一方で世の中には、ビジネスモデルに致命的な欠陥があったり、時代の変化に対応することができずに廃業に追い込まれる小・零細企業も必ず一定数出てくる。デフレが悪いわけでも、政治が悪いわけでもなくごくシンプルに、経営者の資質がないとか、企業としての競争力がないことで倒産する小・零細企業が存在するのだ。寿司業界の場合、そういう残念な倒産が、コロナ禍の割に爆発的に増えていないことが「前向きなニュース」だと指摘しているのだ。
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