1000円に手を出す「ダイソー」と100円にこだわる「セリア」 コロナ禍でも好調な業界に変化:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/7 ページ)
コロナ禍でも100円ショップ業界が好調だ。「2強」のダイソーとセリアでは戦略が大きく異なる。キャンドゥとワッツの独自戦略にも迫る。
消費者を飽きさせない100円ショップ
ホームセンターが好調な理由をもう少し詳しく見てみよう。「おうち時間」が増えたことで、生活者が年末にする大掃除を緊急事態時に行ったり、日曜大工や洋服の整理などを平日にしたりするようになったことが背景にある。
また、100円ショップで販売されている商品は、本格的な清掃やDIYには向かないが、隙間をサッと清掃したり、小物や書類の整理したりするには便利だ。ホームセンターと併用された面もあるだろう。
家での料理も、最初は袋ラーメンにゆで野菜を足す程度の簡便なものが多かったかもしれない。ただ、慣れてくると子どものおやつにホットケーキをつくって生クリームや果物を添えたりといったように、だんだんと凝るようになる。そうなると、料理ごとに調理用具や食器もそろえたくなってくる。今の100円ショップには料理が楽しくなるような多彩なグッズが販売されていて、消費者を飽きさせない。
例えば、蓋付のボールに麺と具材を入れ、水を加えて、電子レンジでチンするだけでラーメンができるグッズがある。また、ザルとボールがセットになっていて、水切りした食べ物をそのまま保管できるグッズなどもそろえており、用途に応じたアイデア商品を探す楽しみも提供している。
昨年の緊急事態宣言の直前から秋口までは、マスク不足が顕著で、手づくりマスクの本がよく売れた。100円ショップで販売している日用雑貨を購入し、手作りマスクに挑戦する人も多かった。ダイソーでは「手作りマスクキット」を販売し、実際につくった人から高評価を得ていた。
このように、顧客の細かいニーズを拾った、便利さ、楽しさを100円ショップ各社は追求している。特にセリアは、“セリアパトロール”という言葉があるように、毎日のようにお店を訪れて、商品をチェックする熱烈なファンが多い。ブロガー、インスタグラマーとして、SNSを駆使し、実際に購入した商品写真をアップして、インフルエンサーの役割を果たす人もいる。
この“パトロール”行為は、他の100円ショップでも盛んになっている。100円とは思えない秀逸な商品が発見されると、宣伝せずともSNS効果で爆売れするケースがしばしばある。
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