ニューノーマルの「オフィス必要論」 コクヨが新オフィスにつくった“6つの機能”:アフターコロナ 仕事はこう変わる(2/3 ページ)
新型コロナの影響で、オフィスを見直す動きが活発だ。オフィス設計を支援するコクヨは、自社オフィスをリニューアル。働き方の変化に応じた6つの機能を持たせた。今後は“ここでしかできない体験”を提供し、生産性や創造性の向上をサポートするのがオフィスの役割だ。
各フロアに持たせた「6つの機能」
社員が働く場であるオフィス部分のリニューアルは20年12月に完成し、運用を始めている。実際に、どのような働き方を実践しているのか。南館の4〜9階に当たるオフィスは、フロアごとにそれぞれ別の機能を持っている。「企む」「集う」「試す」「遊ぶ」「整う」「捗る」がフロアごとのコンセプトだ。
その全フロアの家具には、社員の位置情報とエリアごとの人数を可視化するため、約500枚のビーコンを取り付けた。密集状況を一目で把握できるようになっている。事前に予約ができる座席や会議室も用意しており、密を避けながら働く場所を決められる仕組みにした。
ただ、どこのフロアで働くかということは、密集状況を参考にするだけでなく、その日の業務内容や気分で決める。フロアによって、雰囲気や使用できる設備の種類が異なるからだ。どのようなフロアを用意しているのか。
9階の「企む」フロアは、プロジェクトルームやボードルームを備え、機密性の高い会議などに適した機能がある。中央にはラウンジもあり、交流もできる。全体的に落ち着いた雰囲気のフロアだ。
一方、8階の「集う」フロアは部署などのミーティングをしやすいエリア。ミーティングスペースにはカーテンの仕切りと動かせる家具があり、人数や用途に応じてスペースの広さを変えることもできる。また、Web会議用のボックス型の個室のほか、1on1ミーティングなどに使える2人用の個室も備える。2人用の個室は、対面する両者の間をガラスで仕切ることができ、感染対策をしながら対話できるようになっている。「社員からの人気が高い設備」(佐藤氏)だという。取材時には、社員が思い思いの場所で作業をしたり、広めの打ち合わせスペースを作って何人かで働いたりする様子がみられた。
7階は、専門性の高い業務を行う「試す」フロア。商品開発や試作に必要な作業台やサンプル、資料をそろえる。例えば、オフィスチェアに使用する生地のサンプルなどが並べられていた。プロトタイピングに特化した機能を持つエリアだ。
6階は「遊ぶ」フロア。オープンな座席のほか、ステージやキッチンを設置しており、イベントなどを通じてコミュニケーションを活性化させる機能を持っている。「さまざまな交流によって、仕事以外でもインプットを得られる場」(佐藤氏)を目指したという。
5階は、総務部門やバックサポートの社員が常駐する「整う」フロア。コンシェルジュカウンターがあり、郵便物の受け取りや備品調達、荷物を預けるロッカーの利用などができる。仕事に向かう準備を整える機能をそろえる。
そして、作業に集中するための空間が、4階の「捗る」フロアだ。随所に、他のフロアにはないハイスペックなデスクやモニターなどを設置。ウルトラワイドモニターやトリプルモニターを設置した座席のほか、同社製品の上下昇降デスクや、座面が揺れる高機能チェア「ing(イング)」、天板が傾斜するデスク「UPTIS(アプティス)」などを備えた座席がある。在宅勤務では用意するのが難しい快適な作業環境だ。モニターを使いこなし、作業に没頭している社員の姿があった。
関連記事
- 社員の9割「テレワーク継続」の企業が実感した、リモート化の絶大な効果
特に中小企業でテレワーク継続が難しいケースが多い中、約400人いる社員の9割がテレワークを続けているのがBFTだ。試行錯誤の中で続けてきたが、業務のオンライン化によって「社内コミュニケーション」と「外部との連携」に大きな“効果”が現れている。 - テレワーク不可でもクラスターは防ぎたい――小さな工夫で感染リスクを減らす「非接触型オフィス」とは
テレワーク導入やオフィス改装は業務やコストの制約があってできない、でも感染対策は必要――。そんな企業に対して、小さな工夫でできる「非接触型オフィス」を提案するデザイン会社がある。感染リスクを減らすポイントと、これからのオフィスづくりの考え方を聞いた。 - 「広場=にぎわい」は古い? 神田のオフィスビルで生まれた新しい空間の仕掛け
東京・神田で開業したオフィスビル「KANDA SQUARE(神田スクエア)」。仕事もできる開放的なパブリックスペースが特長の一つだ。設計した日建設計の提案は、アフターコロナの働く場を考える上でも参考になる。今後のオフィスの在り方について聞いた。 - トレーラーハウスも登場、“働く場所”をどう選ぶ? シェアオフィスのカタチを探る三井不動産の戦略
三井不動産は法人向けシェアオフィス「ワークスタイリング」の新サービスとして、個室特化型の施設を展開する。コロナ禍によって、個室の利用が3倍に増えたからだ。新サービスの狙いと、トレンドの変化に対応し続けるワークスタイリングの戦略を聞いた。 - 「洋服の青山」が自前でつくったシェアオフィス スーツ店が“仕事場”を提供する意味
「洋服の青山」を展開する青山商事がシェアオフィス事業に参入、1号店をオープンした。“仕事着”だけでなく、新たな“仕事場”を提供していくという。新規事業立ち上げの狙いと、自社で一から開発した施設の特徴について聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.