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旅行業界注目の「マニアックSIT」、鉄道サークル企画の豪華客車貸切ツアーから考える:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/5 ページ)
鉄道旅倶楽部が企画した豪華客車「サロンカーなにわ」の貸切ツアーが大成功に終わった。国鉄時代に大阪地区で製造された「サロンカーなにわ」は、お召し列車の実績もあり、乗っておきたいファン憧れの車両だ。「SIT」とは特別な目的に絞った旅を指し、低迷する旅行業界のなかでも堅調で注目されている
2020年12月12日から13日にかけて、「鉄道旅倶楽部および交流団体専用貸し切り列車ツアー サロンカーなにわで行く岡山・倉敷の旅」が開催された。
「サロンカーなにわ」という車両は、国鉄時代に大阪地区で既存客車を改造した豪華客車だ。座席は大きくゆったりと配置され、編成の前後に展望車もある上、お召し列車に起用された実績もあり、鉄道ファンには憧れの車両だ。しかし、国鉄時代の製造のため「乗れるときに乗っておかないと……」という車両でもある。この車両を鉄道旅倶楽部という社会人団体が貸し切り、ツアーを企画・開催した。
このように特別な目的に絞った旅行を、旅行業界では「SIT」と呼ぶ。「SIT」は「Special Interest Tour」の略で、スポーツ観戦や美術鑑賞、舞台演劇や音楽ライブなど「特別な目的に絞った旅行」を指す。目的がある旅なので、旅行市場低迷の中でもSITは鉄道のみならず堅調だったという。
さらに今回のような団体専用車両への乗車が目的となると、特別ですらなく、超特別なのだ。一人旅では実現できない上、コアなファンしか集まらない。いわば「マニアックSIT」といえる。
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