旅行業界注目の「マニアックSIT」、鉄道サークル企画の豪華客車貸切ツアーから考える:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)
鉄道旅倶楽部が企画した豪華客車「サロンカーなにわ」の貸切ツアーが大成功に終わった。国鉄時代に大阪地区で製造された「サロンカーなにわ」は、お召し列車の実績もあり、乗っておきたいファン憧れの車両だ。「SIT」とは特別な目的に絞った旅を指し、低迷する旅行業界のなかでも堅調で注目されている
趣味サークルが企画したSIT、「サロンカーなにわ」ツアーは大成功
貸し切り列車というと、修学旅行や社員旅行、あるいは旅行会社が企画・募集するものが多い。しかしこれらとは別に、旅をしたい人が仲間を集めてリクエストし、旅行会社が段取りを付けて運行する貸し切り列車もある。
今回の場合は、「サロンカーなにわという豪華客車を貸し切って、鉄道好きの仲間たちと乗りたい」という鉄道旅倶楽部の要望に対し、鉄道旅倶楽部と日本旅行とが調整してプランを確定させた。そして鉄道旅倶楽部が会員へのメール告知やTwitterでの案内を行った。
参加希望者にはその後、日本旅行が作成したパンフレットと申込書が送付される。ここから先の受付、集金管理、乗車券や車両の手配、お弁当の調達、ホテル予約などは、すべて日本旅行が行う。鉄道旅倶楽部側から見ると、乗りたい列車や車両を指定して旅を企画し、実際の旅行業務を日本旅行にアウトソーシングした形となる。
今回のツアーで、特にアウトソーシングが奏功し、乗客としても心強かったといえる点がCOVID-19対策だ。日本旅行などの旅行業者は旅行参加者に対して、健康申告書の提出、ソーシャルディスタンス確保、検温、除菌などをガイドラインとして取り決めており、この旅でも適用されていたからだ。
マスク着用は順守され、受付時や途中駅で長時間停車して車内に戻ったときも、日本旅行の添乗員が除菌スプレーを参加者の手に散布して回った。こうした配慮の結果、このツアーの2週間後も感染者は発生しなかった。
行程は大阪駅11時2分発、岡山駅14時44分着。以降は自由行動で、各自ホテルにチェックイン。翌日は倉敷駅14時発、大阪駅17時53分着。オプションで復路出発前に倉敷市駅から水島臨海鉄道の定期列車に貸切車両を連結し往復するツアーも設定された。ツアーでは特別に、通常の終点「三菱自工前」の奥にある「倉敷貨物ターミナル」までの往復できた。
終着駅からの延長運転は、日本旅行と水島臨海鉄道の調整により実現した。ただし、倉敷貨物ターミナルでの降車はできず、車内からの見学となった。さらに水島臨海鉄道は当日、車両基地があるこの地で、歴代車両などを側線に並べて参加者に見せてくれるという粋な計らいもしてくれた。一人旅やグループ旅行では体験できない団体旅行ならではの収穫に、参加者も大喜びだった。
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