再燃の「キャンセルカルチャー」に、企業はどう対処すべきか:世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)
「キャンセルカルチャー」をご存じだろうか。人権問題などを狙って否定し、ボイコット運動などを起こすことだが、米国でこの問題が再燃している。どういうことかというと……。
超売れっ子の表現
スースの場合、一体どんな顛末(てんまつ)だったのか。少し振り返りたい。
スースは、1904年にマサチューセッツ州で生まれた児童向けの絵本で知られる作家だ。本名はセオドア・スース・ガイゼルだが、ドクター・スースというペンネームで60冊以上の絵本を出し、世界中で7億冊を売り上げている超売れっ子である。『キャットインザハット』や『グリンチ』といった本はあまりにも有名で、今も世界中で愛されている。世界で最も成功した絵本作家の1人で、彼は1991年に87歳で死去している。
そんな彼の作品が近年、人種差別的だとの批判を受けていた。例えば、今回絶版にされた本の一つである『And to Think That I Saw It on Mulberry Street(マルベリーどおりのふしぎなできごと)』には、「箸で食べる中国人の男性」という登場人物がいて、それが人種差別的だとの批判が出ていた。実はこの「中国人の男性(a Chinese man)」は英語で「a China man」となっていたが、差別的だとして1970年代に変更になった経緯がある。「China man」という表現自体が米国では差別的だと認識されているからだ。
その絵は、目が細く描かれた男性が、東南アジアのイメージがある傘帽子を被り、お箸と茶碗を持って走っている。こうした表現に対し、中国系欧米人の作家などが人種差別的だと数年前から文句をつけていた。
そのほか、スースの『If I Ran the Zoo』も絶版になったが、その中には、3人の目の吊り上がったちょび髭の中国人が出てきて、猿のように描かれたアフリカ人2人も出てくる。『The Cat's Quizze』には顔が黄色に塗られた日本人も登場している。
こうした批判を受けて、全米教育協会(NEA)は2017年に、それまでイベントなどでも重用していたスースの絵本から少し距離を置く姿勢を見せた。最近では、米国の公共学校が彼の絵本を取り扱わないようになっている。人種差別的な批判が燻(くすぶ)っているからだ。
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