再燃の「キャンセルカルチャー」に、企業はどう対処すべきか:世界を読み解くニュース・サロン(3/5 ページ)
「キャンセルカルチャー」をご存じだろうか。人権問題などを狙って否定し、ボイコット運動などを起こすことだが、米国でこの問題が再燃している。どういうことかというと……。
日本の漫画にも問題作
こうした人種問題について、人々はこれまで以上に敏感になっている。ただ以前から、スースが人種差別的な作品を残していることは知られていた。例えば、第二次世界大戦時の日本に対する風刺画などがある。日本人を「ジャップ」と描いて敵視し、強制収容所に入れることに賛同するような風刺画を何点も描いていた。日本人を小バカにするような作品である。
しかし、1953年に日本を訪問して、日本人と触れ合ったり、広島にも立ち寄ったりするなかで、彼は考え方を一変させた。その後に出版した『ぞうのホートンたまごをかえす』では、日本人の友人に献辞(けんじ)を捧げたほどだった。
米国基準で見ると、日本の漫画にも問題作がある。例えば、『キン肉マン』に登場するラーメンマン。細い目のちょび髭がある描写が人種差別になってしまう。考えてみると、『キン肉マン』はステレオタイプ的な世界のキャラクターのオンパレードなので、今なら世界各国からバッシングを受けていたかもしれない。
『キン肉マン』のテレビアニメ版は、さらに過激だ。ラーメンマンとドイツ出身のブロッケンマンとの戦いでは、ナチスのハーケンクロイツ(鉤十字)のマークを腕と背中につけたブロッケンマンが、ラーメンマンに対して口から毒ガスを吐いて攻撃する。それを中継アナウンサーが「ナチスのガス室の再現か」と説明している。しかもラーメンマンは逆転して、ブロッケンマンをラーメンにして食べてしまうのだ。今思えば、かなり過激である。
スースの場合でも、第2次大戦時など過去に描かれた風刺画を今になって批判するのはさすがに酷である。作者の考え方を否定し、歴史そのものも客観的に学べなくなるからだ。さらに、歴史に刻まれてきた文化の変遷も否定することになる。
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