「境界戦機」「30 MINUTES SISTERS」――BANDAI SPIRITSはなぜ新作を次々に発表したのか(2/3 ページ)
3月16日〜19日にかけてBANDAI SPIRITSから新しい取り組みが次々と発表された。なぜタイミングが重なったのか、その狙いは何か。プラモデルに詳しいライターのしげるさんが分析する。
ここ最近のBANDAI SPIRITSに顕著な動きが、自社でコントロールできるコンテンツや、ガンダムシリーズ以外の商品の開発に以前より注力している点だ。「境界戦機」に限らず、“30分で組み立てられる”という手軽さとカスタマイズによる遊びの魅力を押し出した「30 MINUTES MISSIONS」。そして先日発表されたその姉妹シリーズの「30 MINUTES SISTERS」。“女子高生ヒロインが劇中で組み立てて使うキットと全く同じ銃型プラモデルを売る”というコンセプトが注目を集めた「ガールガンレディ」。電撃文庫のライトノベルを原作としたアニメの登場メカをキット化する「86 -エイティシックス-」。このように、バックボーンとなるコンテンツが新規に始まる、もしくはコンテンツ自体がプラモデルオリジナルである商品を矢継ぎ早に発表している。
そもそもバンダイの基本的な商品展開の方法はいわゆるキャラクタービジネスであり、テレビ番組などで露出したキャラクターの関連商品を幅広く販売するものである。BANDAI SPIRITSはその中でも特に高年齢層向け商品を開発・販売するバンダイナムコホールディングスの子会社であり、ガンダムシリーズの商品は同社の屋台骨となっている。しかし、前述のように、ここにきてガンダム以外の多数のコンテンツが世に出ることとなった。
BANDAI SPIRITSからこれだけ多数のガンダム以外に関連した商品が売り出されるということは、設立時から開発していた商品が今になってようやく露出できるタイミングになったということなのではないだろうか。映像化も含めてコンテンツと商品の仕込みをするとなると、数年単位で準備期間が必要になる。BANDAI SPIRITSが設立された2018年2月から逆算すると、2021年春〜秋はようやく開発が終わった商品が販売できるタイミングになった時期として不自然ではない。また、映像化の絡まない「30 MINUTES MISSIONS」の発売が他タイトルより早かったのも、仕込みにかかる時間が比較的短かったからだと考えれば納得がいく。
これらの動きを見るに、BANDAI SPIRITSの大きな任務の一つが、ガンダムという屋台骨を強化すると同時にガンダム以外のヒット商品を生み出すことだというのは明白である。2021年に始まるコンテンツはどれも方向性がバラけており、またテレビアニメ以外にも実写ドラマに挑戦したり、競合他社がひしめくオリジナル美少女プラモのジャンルに本格参入したりと、これまでとは違ったスタイルの商品開発にトライしていることがうかがえる。悪く言えば「数を打って当てる」という構えだが、まず「数を打てる」というところにバンダイの体力の強さを見ることができる。
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