半導体チップ不足が“対岸の火事”とは言えない理由 自動車業界以外にも波及:本田雅一の時事想々(3/3 ページ)
なぜ、自動車業界で半導体チップが不足しているのか。そして、より身近なデジタルガジェットなどにも影響が広がり、最終的には世界経済の行方も左右する恐れがあり得るのか。その外郭を追いかけたい。
新型コロナウイルスによる経済への影響について、今さら言及する必要もないが、コロナ禍の影響が弱まれば、開発遅れや投入見送りがされてきた製品や既存製品のアップデートが進む。5G投資やそれに伴うサービス事業者のサーバ向け投資なども増える。
コロナ禍が明けてから、さらに非線形に需要が高まる懸念がある。ところが、いつそうした時期がやってくるのかは誰も予測できない状況だ。
再スタート時の成長シナリオを描くために必要不可欠な半導体チップの確保という不確実な要素を抱え、需給逼迫で半導体チップの価格も上がっている中、コロナ明けに各社が一斉に増産しようとしても簡単には物事は進まない。
半導体チップ生産キャパシティーをどこまで確保できるか、その調達能力がそのまま企業の力、もっと視野を広げるなら国家の力へとつながりかねない。
それは、自社開発の半導体チップを継続できなくなったファーウェイが、その勢いを持続させることが難しくなっていることからも分かるだろう。いくら優秀な設計をしたとしても、前提となる最新の半導体生産設備がなければ製品にまでは仕上がらない。
コロナ禍が落ち着いた後、速やかな成長を望むのであれば、企業単位での戦略性はもちろん、国全体で半導体調達について戦略的な動きが求められる。
と、このようなコラムを書き上げた直後、インテルの新しいCEOに着任していたパット・ゲルシンガー氏が、かつての強かったインテルを彷彿(ほうふつ)とさせるアグレッシヴな生産技術と工場への投資、それに他社製品の受注を受け付けるファウンドリ事業に着手すると発表した。
他社への生産委託を検討していた前CEOとは真逆の戦略だが、インテルが本来の姿に戻ったともいえるだろう。危機的なほどの一強多弱の状況はいずれ解決へと向かうのかもしれない。しかし、世界情勢が変化するとしても、まだ数年はかかることを念頭に置かねばならないだろう。
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