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小売業が広告配信のプラットフォーマーに オンラインとリアル店舗のデータを融合した「リテールメディア」成功の鍵は?

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 オンラインマーケティングの隆盛は、顧客行動を可視化しやすいことが大きな理由の1つだ。例えば、Webサイト上では、そのユーザーがどんな属性を持ち、何に興味関心を抱きやすく、最近どんなものを購入したかまで追跡できる。一方、店舗のようなリアル空間では、何がどれだけ売れたかはPOSデータで把握できるものの、個人にひも付いた粒度の細かい購入プロセスを可視化することは困難だといわれてきた。

 しかし、消費者の購買行動においてWebとリアルの境界はなくなりつつある。スマホで商品情報をチェックしてから店舗へ行くこともあれば、店舗で商品を試したあとにオンラインで購入することもある。マーケティング効果を最大化させるためには、オンラインとリアルを行き来するユーザーの行動をシームレスに捉える必要がある。

 近年、国内外の小売業では、オンラインとリアルのデータを連携して活用する「リテールメディア」の構築が始まりつつある。流通総額国内最大規模のリテールメディアDMP事業を展開するアドインテも、オンラインとリアルを融合させた流通小売業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指している。その狙いはなにか、アドインテ副社長の稲森学氏に話を聞いた。


アドインテ 取締役副社長の稲森学氏

「AIBeacon」で来店者の行動をデータ化

 アドインテは「AIBeacon」を起点にしたOMO(Online Merges with Offline)マーケティング分野などリテールテックを強みとする京都発のベンチャー企業だ。2020年6月には三井物産や丸井グループなどと事業提携を強化し、総額21億2500万円の資金調達をしたことで注目を集めた。

 同社が独自開発したIOT端末「AIBeacon」は、リアル店舗へ設置することにより、店内または店舗の近くにいるスマホユーザーの行動特性を取得し、その結果、パーソナライズされたプッシュ通知やクーポンの配布、デジタル広告配信などを可能にするO2O(Online to Offline)ソリューションである。

 従来のBeaconは、来店したユーザーが所持するスマホのBluetoothがオンで、なおかつ専用アプリ(多くはその店の公式アプリ)が入っている状態でなければ機能しなかった。「『アプリユーザーが少ないから効果が期待できない』と導入を断られるケースもありました」と稲森氏は振り返る。

 しかし、AIBeaconはBluetoothだけでなくWi-Fiにも対応する上、アプリがインストールされていないスマホでも、個人情報を取得することなく、匿名アクセス情報などからIDを収集しデータ化することが可能。また、アプリとの連携により、ユーザー許諾を得たGPSのデータなどとも組み合わせることができる。これにより、従来のBeaconよりも来店者のデータをより多く計測できるのが強みだ。

 収集したデータを集計し、来店者の滞在時間や来店回数、来店頻度、店内の回遊経路を分析し、BIツールによってダッシュボード化して提供することが可能。可視化することによって、曜日ごと、時間帯ごとに分析することができ、より戦略的なリテールマーケティングを可能にする。


AIBeaconを店内に設置すると来店者の行動を視覚的に解析できる

広告業界に参入する小売業

 国内ではすでに大手スーパーマーケットやドラッグストア、ホームセンター、百貨店など、小売業界の主要企業で同社のソリューションが活用されているという。稲森氏も「小売企業がオフライン・オンラインを統合したデータ基盤を構築し、自ら店舗分析をすることは当たり前の時代になりました」と語る。

 「次なる段階は、小売業によるリテールメディアの構築です。来店した人のID-POSとオフラインのデータ、そしてデジタル広告をかけ合わせた広告配信プラットフォームを小売業が構築することでメディア事業をスタートさせ、購買起点のリテールプラットフォーマーが台頭すると考えています」

 小売大手の米ウォルマートを始め、クロガーやノードストロームがリテールメディアに参入し、オンラインとリアルの売上データを結び付けるサービスを推進している。ウォルマートはすでに広告収入だけで数千億円の広告売上を上げており、Amazonの広告収入1兆円を追い上げる勢いだ。


リアル店舗のデータを活用した高精度なターゲティングを背景に、広告業界に攻勢をかける小売大手の米ウォルマート

 日本でもこの流れは始まっており、ドラッグストア業界が動きが早く、追随する形で、コンビニエンスストア、百貨店、家電量販店も次々にリテールメディア市場に参入。アドインテもツルハHDやその他大手流通小売業との連携によって、共同販促プラットフォームの開発を開始している。すでに、分析連携可能な決済流通総額は1兆9000億円を突破している。2020年はリテールメディアを構築したいという要望が増えた年だったことから、「2020年は日本におけるリテールメディア元年」とアドインテは表現している。

 リテールメディアとは、オンライン・オフライン全てのユーザーのタッチポイントをデータ化し、分析したデータをもとにデジタル広告やメルマガ配信、アプリへのOne to Oneなコミュニケーション施策を可能にするマーケティングプラットフォームを指す。データソースはアプリ内データ、ECサイトの購買データといった従来のデータに加え、AIBeaconによるリアル店舗での行動データやID-POSデータをも掛け合わせる。これにより、より効果的なセグメンテーションや、来店の頻度、行動範囲などに基づいた広告配信が可能になる。さらに、配信後の購買行動の変化まで分析できるようになるため、客の購買を行動を「点」ではなく「線」で捉えられるようになる。


アドインテのDMP(Data Management Platform)はMicrosoftのAzureで開発されている

 例えば、競合他社の商品を購入している人がYouTubeを閲覧した際、自社商品の広告を配信し、次に来店したときにどのメーカーの商品を買ったのか、購買行動変化を分析できる。それ以外でも、自社商品を買わなくなった離脱ユーザーや、併売分析からカテゴリー新規を狙った配信なども可能になる。稲森氏は「これまでのデジタル広告ではできなかった領域に突入しています。ターゲティングの精度とROIを上げるための詳細な分析レポートはリテールメディアでしか実現できない」と自信をのぞかせる。

 さらに、AIBeaconとGPSデータなどを活用することで、リアル店舗の競合分析も可能になる。大手流通小売業と連携して、試行錯誤を重ねながら時間帯や曜日ごとに競合分析や商圏分析を行い、その結果をもとにチラシの配布エリアを最適化。この取り組みは高評価を得ているという。

 アドインテが開発するリテールメディアは、AIBeacon端末を設置し、ID-POSデータをかけ合わせて、広告配信プラットフォームでプッシュ通知やメルマガ、デジタル広告を配信している。

 「ID-POSとスマホのIDを連携したリテールメディアによって、今まで見えなかった効果測定が可能になり、広告配信による購買行動の変化までをレポーティングできるようになりました。これはリアルな店舗を持つ小売業の大きな可能性です」

 ちなみにアドインテは、DMP(Data Management Platform)の開発にあたって、MicrosoftのAzureを活用しているという。「Microsoftの総合的なサポートがしっかりしていて一緒に事業を伸ばしてくれているので採用しました。また、Azureは機械学習に強いので、今後ID-POSなどデータを高度に分析していくときにも相性がいいと感じています」

膨大なリアルのトラフィックと購買データを活用したリテールメディアが台頭する

 コロナ禍の影響もあり、広告市場規模は縮小傾向にある。「海外ではすでにメーカーの広告費がリテールに流れてきており、その傾向はコロナ禍においても加速しています。ブランドメーカーの大きな動きもあり、流通向き合いのリテールセールス、マーケティング、宣伝部などの予算統合も起こっており、日本でも従来的なマーケティング投資とリテール広告投資の統合が増えてくると考えています」と稲森氏は分析する。

 一方で、近年はGAFAのようなプラットフォーマーがリアルの購買ポイントに降りてきた点も押さえておきたい。これまで、生活者情報を大量に集め、広告接触やWebサイトの閲覧履歴、人間関係などのデータからメディアとしての地位を確立してきたデジタルプラットフォーマーだが、SNSがECサイトのタッチポイントとして活用され始めていることも目を引く。ECとシームレスな連携できたり、ワンクリックで購入できたり、カート機能を実装してEC化したり、最近ではリアル店舗を出店するなど、購買ポイントまで機能拡張してきた。


流通小売業のDXの加速により、リアルの購買データを活用できるリテールメディアが台頭する

 購買ポイントに機能拡張してきたデジタルメディアと、メディア機能を兼ね備えたリアル店舗の境界線がどこで引かれるのか――人々の消費行動の8割は、これまで“不可視”の領域だったリアル店舗・オフラインにある。デジタル上のアクションに課金する仕組みをもったデジタルの世界と、さまざまなテクノロジーを駆使してリアルにおける消費者の行動分析を可能にした店舗。流通小売が保有するデータをもとに、高精度な広告配信と分析を可能にする大手流通小売とアドインテが協業するリテールメディアソリューションは、今後の広告市場に大きな変化をもたらしそうだ。

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提供:株式会社アドインテ 、SB C&S株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2021年4月30日

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