平城京や自由が丘で「踏切除却」! 鉄道、街はどうなる?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/6 ページ)
2021年3月25日、奈良県、奈良市、近鉄が「平城宮遺跡内を通過する近鉄奈良線の移設」に合意した。また東京都目黒区自由が丘地区の都市再生計画が始動。改良したい踏切があっても、今までは国土交通大臣の指定を待つしかなかったが、4月1日から「踏切道改良促進法等の一部を改正する法律」が施行され、自治体側から提案できる。
平城京は大和西大寺駅の高架化とセット
平城京の遺跡内に近鉄奈良線の線路が通っている。「日本の歴史教科書にも登場する物件の遺跡に鉄道を敷くとはけしからん」となりそうだけど、順序が逆だ。平城京に遷都される前に近鉄が走っていたから……という冗談はさておき、近鉄の前身、大阪電気軌道が14年に大阪・奈良間を直結する線路を敷いたとき、そこは平城京の遺跡ではなく農地だった。平城京は07年に一部が発見されていたけれど、遺構全体は特定されていなかった。
60年(昭和35年)に奈良国立文化財研究所は平城宮の範囲を特定し、近鉄の線路も平城宮の内側と発覚した。それでも世論も近鉄も「ああそうですか」という認識だっただろう。近鉄としては国の免許を得て建設した。そこに遺跡を損なう悪意はなかった。国が「免許を取り消すから迂回しろ」というならば費用を補償してもらいたいはずだ。しかしそこまでの真剣な討議はなかったようだ。
78年(昭和53年)に国は「特別史跡平城宮跡保存整備基本構想」を示し、その中で平城宮の国定公園化と「近鉄奈良線の移設」を掲げた。大原則として「特別史跡平城宮跡保存整備基本構想」関連費用は国が全額負担する方針だ。ただし期限は示されず、動きがないまま歳月が過ぎた。98年に朱雀門、10年に第1次大極院殿が復元されると、それらを背景に近鉄電車が走る。この風景はかえって「歴史と近代が融合した珍しさ」で名物になった。
平城京は710年から784年まで都だった。間に約5年間があり恭仁京となっていて、それを差し引くと74年間だ。近鉄奈良線は14年から現在まで104年間の歴史がある。もう近鉄の実績のほうが長いわけで、ネットでは「動かすなら平城京のほうじゃないか」といういう冗談も飛び出した。
そんな膠着(こうちゃく)状態を動かしたきっかけが踏切道改良促進法だ。17年(平成29年)に大和西大寺駅西側の4カ所が大臣指定され、18年(平成30年)に大和西大寺駅東側の4カ所が指定された。東側の大和西大寺1号踏切は平城宮の西側境界にあり、大和西大寺2号踏切は平城宮内、朱雀門付近にある。このうち東側と西側の1カ所ずつは、20年(令和2年)の年度末、つまり21年3月31日が「改良方法を記載した地方踏切道改良計画」の提出期限となっていた。
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