平城京や自由が丘で「踏切除却」! 鉄道、街はどうなる?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)
2021年3月25日、奈良県、奈良市、近鉄が「平城宮遺跡内を通過する近鉄奈良線の移設」に合意した。また東京都目黒区自由が丘地区の都市再生計画が始動。改良したい踏切があっても、今までは国土交通大臣の指定を待つしかなかったが、4月1日から「踏切道改良促進法等の一部を改正する法律」が施行され、自治体側から提案できる。
踏切を解消する方法として、線路あるいは道路を高架または地下にする。しかし歴史遺産の平城宮に高架建築は問答無用。それならば地下にするかといえば、恐ろしくてこんなところは掘れない。こんな歴史遺産を掘ったら何が出てくるか分からない。高輪ゲートウェイ駅前から「出土」した東海道線高輪築堤の騒動を見れば分かるように、ますます進ちょくは遅くなる。
そこで、これら8つの踏切を除却するため「大和西大寺駅の高架化」「近鉄奈良線の平城宮南側への移設」が決まった。懸案を一挙に解決するだけではなく、指定8カ所を含む15カ所の踏切を除却する。このプランは20年7月に奈良県・奈良市・近畿日本鉄道が「協議開始で合意」した。しかし、合意の直後「全額自治体負担が原則」の意向を示した近鉄に対して奈良県知事が反発するなど協議の難航が予感された。
総事業費は約2000億円が見込まれており、ここに用地買収費は含まれないため、さらに大きくなると思われる。3月25日の合意は工区を3分割し負担割合を精査した。緊急性の高い踏切2カ所を含む区間では、高架化、駅改良メリットのある近鉄も負担する。平城宮の西から朱雀大路までの迂回路は近鉄側に利点はなく、むしろ迂回の不利が考慮されて全額自治体負担となった。
残りの朱雀大路からJR奈良線の交差部までの負担割合は今後の協議となった。奈良県は地下に移設する新大宮駅のほか、平城宮正面口となる朱雀大路駅、JR奈良線交差部に油阪駅を提案している。近鉄の利点を増やし、近鉄の費用負担を引き出したい考えかもしれない。利用者にとっては便利になるから悪い話ではなく、ここは近鉄にも応じてもらいたいところだ。
ひとまずは円満解決だけど、完成まで40年だ。この距離にしては時間がかかりすぎる。実際の工期は20年ほどで、その前段階の用地買収などで20年かかると予想しているからだ。いま50代半ばの私は完成を見届けられないかもしれない。前段階を何とか切り詰めていただきたく、工事現場から新たな遺跡が現れないことを願うばかりだ。
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