少しずつ見えて来たトヨタの未来都市「ウーブンシティ」:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)
トヨタが実験都市「ウーブンシティ」の発表を行ったのは2020年1月のCES2020だ。ウーブンシティはさまざまな意味でまさに実験的な街である。そしてその面白さはいたずらにハードルを上げていないところにある。そもそもウーブンシティの基本構造はどうなっているのだろうか?
トヨタが実験都市「ウーブンシティ」の発表を行ったのは2020年1月のCES2020だ。実はその一年ほど前から、風変わりな説明会が行われていて、コネクティッドシティという言葉を耳にしたのはそれが最初だった。
最初の説明は「日本における都市の発展と交通」をテーマに行われた、面白いけれど非常に抽象的なものだった。江戸期の交通は大きく別けて2系統あり、人は原則的に徒歩で五街道(東海道、中山道、日光街道、奥州街道、甲州街道)を用い、物流は原則的に船を用いた。
街はどう発展していったか?
まあこのへんの話は個人的にも好きなので、大いに情報を盛り込んで書いておきたい。筆者は北前船(きたまえぶね)の話を思い浮かべつつ聞いた。北海道の昆布や鰊(ニシン)を積んだ船は日本海を南下し、関門海峡を経由して、瀬戸内海を進み、商都大阪へと到着する。途中の港々で荷の売買を行い、米などを買い入れる。海運によって中之島の蔵屋敷に集まった米は実質的に貨幣であり、その取引所があることで大阪は栄えた。
ついでの話だが、大坂のうどんは日高の昆布があってこそ成立した。日本人の誇りでもある「ウマミ」を軸とした出汁が確立したのはこの北前船のおかげである。
余談ついでにいえば、鰊の主たる用途は人の食料ではなく、農業用肥料であり、これが飛躍的に農業生産力を増やしたことによって、農家で人手が要らなくなった。そうやって仕事にあぶれた農家の次男三男が江戸へ出て職人や商人になる。江戸が当時世界最大の人口を持つ都市になったのは鰊のおかげである。
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