物価は上昇しても「給料」は上がらない、根本的な問題:“いま”が分かるビジネス塾(2/4 ページ)
4月から公共料金や食品など多くの商品が値上がりしているが、ビジネスパーソンの給与も上がるのだろうか。筆者の加谷氏は否定的な見方をしていて、さらに下落するかもしれないと予測している。なぜかというと……。
社員数が多すぎる最大の理由は雇用制度
とりあえず70歳まで働けるということは、年金減額が確実な状況において朗報といってよいかもしれない。だが賃金という面で考えた場合、この制度は、日本のビジネス社会に致命的な影響を与える可能性が高い。
日本企業はもともと大企業を中心に終身雇用と年功序列の雇用体系となっており、ビジネスの規模に比して社員数が多すぎる。日本企業の生産性データなどから計算すると、日本企業は米国やドイツなど諸外国と比較して、同じ収益を稼ぐために投入する社員数が1〜2割多い。
これは事業の付加価値が低いというビジネスモデル上の原因もあるが、社員数が多すぎることも大きく影響している。日本企業には、会社に在籍しているにもかかわらず、事実上、仕事がないという、いわゆる社内失業者が400万人以上もいるとの調査結果があるが、これは全正社員数の1割に達する数字である。諸外国と比較して、社員数が多すぎるのはウソではない。
そして日本企業において社員数が過剰となる最大の要因は、やはり雇用慣行と考えられる。
諸外国の場合、業務内容をあらかじめ決めた上で採用を行う、いわゆるジョブ型雇用がほとんどなので、同じ仕事をずっと続ける社員が多い。一方、日本はそうではないことから、新入社員に現場仕事や雑務を割当て、年齢が上がると、多くの人は能力にかかわらず管理職に昇進する仕組みになっている。
このため、常に新卒社員を採用し続けないと現場の業務が回らない。一方で、定年は延長になっているので、中高年社員は管理職として、長期間、会社に雇用され続けることになる。結果として、日本企業では社員数が膨れあがってしまうのだ。
関連記事
- こんなに頑張っているのに、なぜ日本だけGDPが回復しないのか
日本経済の復活がうかがえるような、データがなかなか出てこない。先進国と比べて、GDP増加率は低く、賃金も低い。多くのビジネスパーソンは懸命に働いているのに、なぜパッとしないのか。筆者の窪田氏は「日本社会のシステムがブラック企業化しているから」と見ていて……。 - 「EV化で30万人が仕事を失う」説は本当か
EVの普及によって雇用が30万人失われる――。2月、このような記事が話題になったが、この数字は本当なのか。ガソリン車と比べEVは部品点数が少ないので、部品メーカーが淘汰されるのはほぼ間違いないが、その一方で……。 - 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。 - 「週休3日」は本当に実現できるのか ネット上で評判が悪い理由
新型コロナの感染拡大に対応するため、自民党が 週休3日制を提言する方針であることが明らかになった。賃金がそのままで休みが増えれば、ビジネスパーソンにとって“うれしい”ニュースになるわけだが、ネット上では評判がよくない。なぜかというと……。 - 「世界一勤勉」なのに、なぜ日本人の給与は低いのか
OECDの調査によると、日本人の平均年収は韓国人よりも低いという。なぜ日本人の給与は低いのか。筆者の窪田氏は「勤勉さと真面目さ」に原因があるのではないかとみている。どういう意味かというと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.