ユニクロ一強のカジュアル市場に一石を投じたワークマン アパレル業界は「安さ」が全てなのか:磯部孝のアパレル最前線(4/4 ページ)
作業服専門店からカジュアル市場への参入を図り、ユニクロ一強の市場に一石を投じたワークマンは、強烈なインパクトを放った。しかし筆者は「安さは企業の親切であるかのように語られるべきではない」と懸念を示す
この先の展開は?新しい物差しを示せるかがカギ
現在のメンズカジュアル市場では、オーバーサイズトレンドの流れもあって、女性は男性向け商品の売り場でもためらいなく品選びをして自分でも着られそうなデザインの洋服を買っていく。
ユニクロのメンズTシャツのレビューコメントを見ても15%は女性コメントが占める(注1)。しかし、男性客が女性売場で代理購買する姿は見かけない。かえって#ワークマン女子という冠によって、男性客が遠のく可能性の方はないのだろうか。
そもそもワークマンは「過酷ファッションショー」と題した悪天候をランウェイで再現して観せる、文字通り過酷なファッションショーを開催するなど、話題作りがうまい。今回も東京ガールズコレクション(TGC)への参加といい「まさか」と思わせるようなプロモーションが目立つ。
その一方で商品在庫も19年3月期決算では71億円だったものが20年3月決算では136億円と一機に倍増。商品が完売するまでに掛かる期間も伸び始めたようだ。キャンプグッズやレディスファッションなど新たなカテゴリーには、商品動向ひとつとっても特性が違う。従来の作業服FCチェーン店で測れない物差しを新たに示すことができるのか。これから地方にも展開を図るロードサイド型レディスカジュアルショップの躍進に注目したい。
注1:2020年夏「メンズスーピマコットンリラックスフィットクルーT」レビューコメントより筆者によるカウント数(総コメント数450人、男性378人、女性70人、不明2人 21年4月20日現在)
著者プロフィール
磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)
1967年生まれ。1988年広島会計学院卒業後、ベビー製造卸メーカー、国内アパレル会社にて衣料品の企画、生産、営業の実務を経験。
2003年ココベイ株式会社にて、大手流通チェーンや、ブランド、商社、大手アパレルメーカー向けにコンサルティングを手掛ける。
2009年上海進出を機に上海ココベイの業務と兼任、国内外に業務を広げた。(上海ココベイは現在は閉鎖)
2020年ココベイ株式会社の代表取締役社長に就任。現在は、講談社のWebマガジン『マネー現代』などで特集記事などを執筆。
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