スピード経営で知られるアイリスオーヤマ、問題発生のたびに躍進できたワケ:家電メーカー進化論(2/5 ページ)
アイリスオーヤマは、コロナ禍でもマスク生産拠点をいち早く国内に構えるなど、スピード経営を実践し続ける企業の1つ。アイリスオーヤマ 代表取締役社長 大山晃弘氏に、時代の流れに素早く対応するスピード経営の秘訣と、時勢を見極める製品展開、今後の事業構想について話を聞いた。
LEDの本格参入で得たノウハウで、家電事業に参入
――アイリスオーヤマといえばもともとはプラスチック製の生活用品メーカーでしたが、家電事業に参入した理由を教えてください。
2009年に地球温暖化対策でCO2削減の動きが、世界中で起こりました。この問題に対し何ができるかを考えた結果、LED照明ならCO2削減の効果も高いということで開発に踏み切りました。従来の白熱電球をLEDに置き換えることで、消費電力の削減と製品寿命の延長が同時に行えます。
もちろん当時もLED照明を販売している会社はありましたが、一般家庭へ広く普及させるには価格が高い状態でした。そこで、手軽に手にとれる価格で販売できるよう設計を見直し、10年に1980円で発売しました。当時のLED照明は、価格が5000円というような時代でしたから、とにかく引き合いが殺到しましたね。
――コロナ禍のマスク製造と同様に、家電事業への参入も時勢を捉えた判断だったのですね。とはいえ09年は、まだ非家電の生活用品メーカーという印象が強いです。当時、LED照明はどのように開発されたのでしょう。
当時は、当社でもLEDタイプのクリスマス用イルミネーションライトを販売していました。LEDチップを買い付け、ライトに組み込むという作業は自社工場で行ったことから、LEDの扱いに慣れていた部分はあります。しかし家庭用のLED照明となると、イルミネーションライトにはない放熱効率といった課題もありました。LED照明の販売にあたっては、開発担当者がかなり試行錯誤したと聞いています。
――照明以外の家電にも本格参入したのには理由があるのでしょうか?
実はLED照明の参入以前も、サーキュレーターや電気ケトルといったシンプルな家電製品は製造していました。ただ、開発から販売までLED照明を本格的に製造したことで、さまざまなノウハウができ、さらに自社工場でたくさんの電子部品を扱うことになりました。LED照明で得たノウハウをもっと生かしたいということで、本格的に家電開発を始めたのです。
また当時は、国内の家電メーカーにとにかく元気がない時期で、たくさんの技術者がメーカーから早期退職したり、海外へ流出していました。彼らを採用することで、さらに当社の家電事業を強化できるのではないかと考えたことも理由の1つです。
家電メーカーの開発製造拠点が関西に多かったため、関西に開発拠点を作りたいと思ったところ、ちょうど良い物件があり「大阪R&Dセンター」を設けることもできました。本当にいろいろなタイミングが良かったですね。
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