ストリーミングの時代に、なぜアナログのレコードが売れているのか:世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)
多くの人がストリーミングサービスで音楽を聴いている時代なのに、アナログのレコードが売れているという。欧米だけでなく、世界各地で人気が出ている背景に何があるのか。調べてみると……。
世界各地でレコード人気
実は、レコードの市場は熱狂的なファンがずっと支えてきた。米国での統計を見ると、05年ごろまで数百万ドル規模で横ばいだったレコード全体のセールスは、07年ごろからじわじわと伸ばしてきた。20年は前年より46%も売り上げが伸び、2750万ドル(約29億7000万円、1ドル:108円)にまで成長している。
100年以上前の技術が一度完全に消滅しそうなほど人々から忘れられていたのに、再び急激な復活劇を果たしているのはなぜなのか。しかも少し前に米ニュースサイトの『クオーツ』が新型コロナ禍でレコードの売り上げも落ちるだろうと予測をしていたが、見事に予想が外れている。コロナ禍にもかかわらず、その勢いは衰えるどころか増しているのである。
米国では20年、レコードの売り上げが86年以降で初めてCDを超えたという。しかも、この傾向は世界各地で確認できる。
例えば英国では、20年にレコード全体の売り上げが前年比30%も増加し、8650万ポンド(約130億円、1ポンド:151円)規模になっている。音楽レーベル全体で見ると、20年にYouTubeで得られた収益よりも、レコードの収益は倍になっている。
その熱は南半球でも感じられる。20年、オーストラリアではCDの売り上げが15%も減少している一方で、レコードは同30%以上も増加している。しかもオーストラリアの業界関係者は地元メディアに、レコード人気が高まっているのは、なつかしさからくる一時的な「哀愁」などではなく、本物の人気になっていると主張している。その証拠に、若い人たちの間で人気が出ているという。
こうしたレコード人気は、「東西文化の懸け橋」「アジアとヨーロッパの交差点」などと言われるトルコでも起きている。トルコでは新型コロナが広がってから、CDやカセットなどと同様に、レコードの売れ行きがかなり好調だという。地元レコード会社のトップは「家にいる時間が長くなるほど、レコードに興味を持つ人が増えた。趣味のようにレコードを集めている人もいる」と地元メディアは報じている。
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