トヨタがいよいよEVと自動運転 ライバルたちを一気に抜き去るのか、それとも?:高根英幸 「クルマのミライ」(2/3 ページ)
トヨタは最新の運転支援技術を採用した新機能「Advanced Drive」をレクサスLSとMIRAIに搭載。さらに、先日の上海モーターショーでは新しいEVを発表した。そして驚いたのは、トヨタが今さら水素エンジンにまで触手を伸ばしてきたことだ。
EVを徐々に増やすか、一気に変えるかは社会の受容性次第
同じことはEVに対する戦略にも通じる。日本の経済界を支える25兆円企業としての責任感と、斬新なアイデアを魅力たっぷりに見せユーザーや投資家を少々欺いても資金や売り上げを手にしようという灰色の商魂とでは、ビジネスの方向性がまったく違うのだ。
先日の上海モーターショーで、トヨタは新しいEVを発表した。すでに試作モデルとして発表していたデザインの完成形であったものの、そのスタイリングと明かされている機能は、今後の売れ行きを予感させるに十分なもので、来年半ばとされる発売が待たれる。
そして一昨年発表されたEVの試作車群の中には、他にもユニークで魅力的なモデルがいくつも存在している。今後4年間でEV15車種をグローバル市場で展開すると発表しているのだ。これはEV市場が拡大しても、EVベンチャーにやすやすとパイを奪わせない、というトヨタの決意の現れともいえる。
国内を見れば、昨年よりトヨタは4チャンネルの販売体制による専売体制を廃止した。販売車種の整理と共に、今後はEV化が同時並行で進められることになる。販売の現場は大変だがタイミングとしては絶妙で、むしろコロナ禍など想定外の災害が重なったことは、後から見れば先に戦略を決めていた分、対応が早められたことにつながるだろう。
そしておそらくディーラーの販売拠点も整理されていく中で、充電ステーションやカーシェアリングの専門拠点といった、新たなサービスを展開していくことになる可能性も高い。EV販売の機が熟してくれば、即座に現場に対応できる。トヨタの強みをそう予測した論評は少なくなかったが、いよいよそれが現実になろうとしているのだ。
関連記事
- SKYACTIV-Xは見切り発車か確信犯か 最新のICTに熟成を委ねたマツダの強かさ
小改良されたSKYACTIV-X。この新世代のガソリンエンジンについては、まだまだ伝え切れていない情報が多い。誤解や曲解、勘違い、無知ゆえの受け売りによる間違った情報も、巷(ちまた)にあふれている。 - ホンダの「世界初」にこだわる呪縛 自動運転レベル3に見る、日本の立ち位置
以前から予告されていた、レベル3の自動運転機能を搭載したホンダ・レジェンドが、いよいよ3月に発売となった。しかし発売を心待ちにしていた高級車好きにとっては、少々期待外れの内容だったかもしれない。というのもレベル3の自動運転が極めて限定的であり、なおかつ販売も極めて限定的だからだ。 - メーカー直販EC、カーシェア、EV化の三重苦 日本の自動車ディーラーは今後どうなる?
ここ5年ほどで、自動車ディーラーの店舗が大きく様変わりしてきている。10年に1回はリフォームなどで清潔感や先進性を維持するのが通例となっているが、このところディーラー再編に伴う建て替えと、新しいCIに沿ったイメージへの転換に向けた建て替えという2つの理由で、かなりの数のディーラーが、それまでと一新する装いを放ち始めたのだ。だが、そんな戦略もコロナ禍ですっかり狂ってしまった。 - EVはクルマか否か アップルも参入の戦いで「敗れる者」と「残れる者」
100年に一度の大転換期と言われる自動車市場。電動化を進める自動車メーカーの一方で、最初からEVで攻勢をかける新興勢力が続々と誕生している。その一方で北米市場では、テスラは顧客満足度では主要なブランドでは最下位となるほど、ユーザーは細かなトラブルに見舞われている。 - トヨタ、ホンダ、スバル、日産が減産 自動車用半導体がひっ迫した3つの理由
世界中の自動車生産工場が新型コロナウイルスに翻弄されている。2020年後半に急速に業績を回復させたメーカーが多い一方で、ここへきて再び生産を調整しなければならない状況に追い込まれている。その理由となっているのが、半導体部品の不足だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.