にわかに進む「週休3日制」議論が空虚な“改革ごっこ”に陥りそうだと思うワケ:スローガンには要注意(5/5 ページ)
「週休3日制」の議論が進んでいるが、筆者はスローガン先行の現状に警鐘を鳴らす。真の改革を伴わない“改革ごっこ”に要注意。
「同一労働同一賃金」「ジョブ型」「男性育休」「週休3日制」――いずれも大切な取り組みですが、ただ制度を整えるだけでは実態は何も変わらず、“改革ごっこ”に終わってしまいます。「同一労働同一賃金」や「ジョブ型」などは、5年もすればまた別の名称に変わって、新しいシステムであるかのように喧伝(けんでん)されて登場することになりそうです。
人目を引く流行語でカムフラージュされた“改革ごっこ”を繰り返すのではなく、根本的な改革につなげるためには、国家戦略としてグランドデザインを描き、政府主導で新たな労働市場を創り出す覚悟で施策を実行することが必要です。しかし、これまでの経緯を見る限り、それはあまり期待できません。
そこで期待するのは、企業をはじめとする民間の力です。“改革ごっこ”ではなく、ただ欧米に追随するのでもなく、「同一労働同一賃金」「ジョブ型」「男性育休」「週休3日制」といったキーワードを一過性の流行語で終わらせず、その背景にある課題に本気で向き合い、独自の解決策を実施する“真の改革者”が世の中に増えれば機運は変わっていくはずです。
価値観の多様化とともに、働き手の意識改革は既に先に進んでいます。働き手が流行語への期待感というベールに惑わされない目を持てば、必然的に“真の改革者”である職場が選ばれるようになるはずです。そうして選ばれた“真の改革者”が勝者となり、日本社会を引っ張るようになっていけば、大きなうねりが生まれて新たなワークスタイル時代を創り出していくことになる――。そんなストーリーが現実化してほしいと秘かに期待しています。
著者プロフィール・川上敬太郎(かわかみけいたろう)
ワークスタイル研究家。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総合研究所』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する“働く主婦・主夫層”の声のべ3万5000人以上を調査したレポートは200本を超える。NHK「あさイチ」他メディア出演多数。
現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、JCAST会社ウォッチ解説者の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。
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