1泊20万円超も コロナ禍なのに高級ホテルが続々開業するワケ:リピーター続々(4/5 ページ)
宿泊業の経営破綻や開業延期・中止などのニュースが続いているが、新規開業が目立ち鼻息荒いのが“高級”といわれるホテルや旅館だ。
「10万円クラスの宿は堅固としたマーケットがある」
21年4月20日に開業した全6室の「ふふ 熱海 別邸『木の間の月』」(静岡県熱海市)も印象的だ。「ふふ」は、各地への出店を加速している日本のラグジュアリーシーンをけん引するブランドで「ふふ 熱海」はその発祥となった宿だ。今回誕生したのは、ふふ 熱海に隣接する場所に開業したワンランク上の滞在を提供する別邸だ。
宿泊料金は1泊2食付き(1室2人)11万円から。客室は最低でも約90平方メートル。最も広い客室は約175平方メートルで、料金は20万円を超える。アメニティー類や備品のセレクトは言わずもがな。スイッチ類のポジションやタッチの感触、計算し尽くされた照明、テーブルの高さやソファの座面の硬度、椅子を引いた時の滑りも考慮されている。一方、客室ミニバーのフルボトルワインを2500円としたことは、“逆サプライズ”的なゲスト目線だ。
ダイニングは「鮨割烹 海の悠波(ゆうは)」。凜とした雰囲気の個室やハイバックチェアのカウンター席が印象的。伊豆や熱海など地元の魚介を中心に「日本料理とすしの融合」をテーマに提供している。
ふふを運営するカトープレジャーグループ(東京都千代田区)の代表取締役兼CEO加藤友康氏は「1泊2食10万円クラスの宿は堅固としたマーケットがある」と語る。ふふブランドのスタート時は、箱根や熱海の高級といわれる旅館でも宿泊料は3万円ほどだった。一方、都内をみると外資系ラグジュアリーホテルが席巻しつつある頃で、宿泊料金5万円、食事に3万円、アルコールに2万円、計10万円という料金設定にニーズがあることが分かったという。「東京から近いリゾート地なら1泊2食付き10万円は需要があるのではないか?」と考え、開業に至ったと話す。
ふふには「スモールラグジュアリー」というテーマがある。小規模だからこそ徹底したサービスが提供できるというのはこれまでみてきた宿も同様だ。出店に際してはエリアの文化、地のもつポテンシャルを重視する。ラグジュアリー宿のゲストには“10万円だろうが20万円だろうが関係ない”というリピーター層も実際多い。もちろん大切なゲストなのだろうが、加藤氏がことさら大切にしたいというのが「たまのハレの日、大切な日に訪れてくれるゲスト」だ。ふふへ出向くと隠れ家、静寂というイメージを抱くが、動線が秀逸でゲスト同士が会わないような仕掛けすら感じる。
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