最高益1兆円のソニーにも、忍び寄る半導体不足の影 インテル“再参入”で状況は変わるか:本田雅一の時事想々(3/3 ページ)
純利益が1兆円を突破したソニー。PS5が好調だが、半導体不足が影を落としそうだ。最先端の半導体生産は台湾TSMCの独壇場。世界中のハイテク企業が頼らざるを得ない状況だ。インテルがファウンダリに復帰することで、状況は変わるのか。
万が一、台湾が国際紛争に巻き込まれることになれば、ハイテク産業は世界的な大混乱に陥ることになる。米中貿易摩擦の中で、米国は中国に対して半導体材料や半導体製造装置、あるいはファウンダリサービスなど、あらゆる側面から“兵糧攻め”を仕掛けている。
中国がこの状況を打開するために、彼らが「わが世界の一部」と考える台湾の支配を強める方向へと向かっても不思議ではないわけだ。過去の世界的な紛争、戦争は、国家的な発展を確保するための資源確保が目的であることが多かった。
現代において、国の産業を発展させる源泉ともいえる半導体のために、中国が何らかの手を打ってくるだろうことは十分に予想しておかねばならない。
中国はすでに戦争の準備を始めているという見方もあるが、もしそれが現実になれば中国の隣国である韓国も巻き込まれることは必至で、サムスンが半導体技術でどれだけTSMCに追いすがろうとも、米国からの視点ではリスク回避の手段とはなりない。
ここでインテルの話に戻ると、彼らは米政府を通じてTSMCと手を握る方法について模索しているのではないだろうか。
TSMCの視点で考えれば、現在は首元が極めて涼しく、ひんやりとした殺気を感じている状況かもしれない。いつ中国中央政府が自分たちに手を伸ばし始めてもおかしくない。そうした中で台湾世論は、もともとある反中国の空気が強まっている。
同じ台湾の鴻海科技(フォックスコン)は、日米ハイテク機器メーカーとの関係を強め、中国の安価な労働力を活用して世の中を変えた。しかし創業者のテリー・ゴウは、事業を拡大する中で中国政府との関係を強めていき、現在は習近平との距離が極めて近い人物と見なされている。
台湾総統を目指していたテリー・ゴウが20年の総統選を諦めたのも、台湾世論が習近平と近しい彼に「ノー」を突きつけたからだ。すでにフォックスコンの経営から退いている彼だが、自らと一族の命の未来のために中国側に寄らねばならない事情があったのかもしれない……とまで言及すると、言い過ぎだろうか。
ではTSMCは中国側に歩み寄るのか、それとも米国に歩み寄るのか。台湾が中国に程近い島国であることは変えられない。とはいえ、米国との関係を強化していくのがTSMCの基本的な考え方であることは、彼らが北米に工場を建設していく計画からも見て取れる。
自らのDNAを残していくことを最優先に考えるならば、インテルによるTSMCの買収はないにせよ(何しろTSMCの時価総額はインテルの2倍を上回っている)、両社によるジョイントベンチャー立ち上げは視野に入っているのではないだろうか。
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