日清食品をデジタル化した“武闘派CIO”が退職──今振り返る、日本企業のちょっと不思議な働き方:長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」 武闘派CIOの仕事論【前編】(3/3 ページ)
元メルカリCIO長谷川秀樹氏が、IT改革者と語る「IT酒場放浪記」。今回のゲストは、3月末に日清食品を退職し独立した喜多羅滋夫氏と、CIO Lounge 友岡賢二氏。「武闘派CIO」を名乗り、変化の時代にもがくIT部門の先頭で背中を見せてきた3人が、仕事論について語り合う。
カイゼンが「失われた30年」をもたらした
友岡: 喜多羅さんと僕は同い年の55歳で、「Japan as No.1」と言われた時代に会社員生活をスタートし「失われた30年」を経験してきました。喜多羅さんは、その風景をどう感じてきましたか?
喜多羅: 日本は完璧を追い求めるあまり、80%から99%にする、99.9%にすることにエネルギーを使いすぎてしまった。その間、他の国は80%の成功を収めたら次と、どんどん先に行ってしまったのかなと思います。
友岡: 日本も戦後の焼け野原、何もないところからあらゆるものが立ち上がり、「やってみなはれ」の精神で伸びていった過去がある。
喜多羅: それがある時期、「日本製のパーツは歩留まりがいい」「日本のすごさはクオリティーだ」と言われた瞬間、全てのものをクオリティーに振り切って、イノベーティブなことに拍手を送ろうという機運が薄れてしまった。
友岡: 国全体がカイゼンモードに入ってしまった。それが、「失われた30年」の根本的な原因だと思うんですよね。
チャレンジには失敗がつきものです。でも、日本企業は減点法で、失敗すると評価や昇進に響くケースが多い。皆が失敗を恐れ、どんどん縮こまってしまいますよね。
喜多羅: 本当にもったいないです。加えて、失敗を失敗と気づいた段階で止める判断や、それを許容する意思がないと、間違った方向にどんどん掘り進めてしまうわけですよね。
友岡: 小さな失敗を恐れて、より大きな失敗を犯すことになる。
問題は、皆の意見を尊重し、合議で意思決定をするがゆえ、重要な判断が遅れてしまうことにあると思います。
喜多羅: 日本で成果を上げている企業にオーナー企業が多いのは、トップの鶴の一声ですぐに動くから。トップを押さえてしまえば組織全体が迅速に動く。
日清食品のいいところもそこでした。実際、入社直後のERPの導入に際しては、CEOが後ろ盾となって、かなりサポートしてくれました。
喜多羅氏は日清食品を辞めて何をしようとしているのか。次のチャレンジや、職業としてのCIOの魅力は、記事の後編で紹介する。
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