バブルの名残 温泉街の「大型施設」が廃墟化 鬼怒川と草津の違いと「大江戸温泉物語」の戦略:どう立て直す?(1/6 ページ)
コロナ禍がもたらす温泉街への影響は甚大だが、「温泉の魅力」として考えさせられるのが“街づくり”という点だ。筆者は「施設そのもので集客できる強い宿は例外的で、温泉地の魅力自体が集客を左右する」と指摘する。
宿泊施設に大打撃を与え続けているコロナ禍。その一方、都市型ホテルや人気ブランド宿の中には強さが際立つ施設もある。そうした宿は施設やサービスのポテンシャルを最大の武器として、宿そのものをディスティネーション的な魅力としてアピールし、高い集客力を誇っている。
他方、観光地に立つ宿泊施設の影響は甚大だ。「不要不急の外出は控えましょう」と観光地へ出向くこと自体がはばかられる中、観光地は総体的に深刻な状況であることが容易に想像できる。
こうしたマイナス要素が支配する中で、「温泉の魅力」としてあらためて考えさせられるのが“街づくり”という点だ。施設そのもので集客できる強い宿は例外的であり、やはり温泉地の魅力そのものが集客を左右することは言うまでもない。
近年の温泉地について旅行スタイルでみると「団体から個人」というワードが想起される。団体が大挙として押し寄せていた時代、宿は“スケール勝負”といった感があった。大宴会場は必須、相応の大浴場や娯楽施設も宿の人気を左右した。
しかし、団体旅行が減少し個人旅行へシフトしていく中で、大型施設はそのスケールが仇となり、方向転換できない宿では経営破綻するケースも続出した。運良く買い手が付いてリブランドされるケースもあるが、運営する価値がないとされれば解体費用が捻出できない建物や権利関係が複雑な場合は放置されることになる。
使用されないハードは傷みの進行も早い。こうして温泉街に暗い影を落とす“廃墟問題”が露呈してきた。旅といえば明るくポジティブなイメージだけに、出向いた先に目を背けたくなるような負の遺産は温泉街にとってマイナス要素でしかない。
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