男性育休を1カ月必須化、取得率4%→100%に 江崎グリコ「Co 育てProject」が社内に浸透するまで(1/5 ページ)
2019年に江崎グリコで始動した「Co 育てPROJECT」。そのなかで、育児休暇を1カ月間取得することを必須化した新制度「Co 育てMonth」を設け、男性社員も100%の取得を実現した。とはいえ、1カ月も休む・休ませるのには、壁は高かったに違いない。どう進めたのだろうか。
本記事について
本記事は『人事実務』(2021年4月号)特別リポート「江崎グリコ 男性育休を1カ月必須化 経営戦略としての『Co 育て PROJECT』」を一部抜粋、要約して掲載したものです。当該号の詳細はこちらからご覧いただけます。
2019年に江崎グリコで始動した「Co 育てPROJECT」。パートナーや周りの家族が協力して子育ての課題に社内外で取り組むプロジェクトだ。そのなかで、育児に専念する独自有給休暇を1カ月間取得することを必須化した新制度「Co 育てMonth」を設け、男性社員の全対象者においても100%の取得を実現している。
江崎グリコでは、どのようにして同プロジェクトを推し進め、男性育休の完全取得を実現可能にしたのか。始動から約3年がたったいま、取り組みの目的、内容とその効果について、同プロジェクトを推進する同社経営企画本部の宮崎友恵氏に伺った。
<会社概要>
●社名:江崎グリコ株式会社
●創立:1922 年2月
●資本金:77億 73百万円
●事業内容:菓子、冷菓、食品、牛乳・乳製品の製造および販売
●従業員数:グループ5364人、本社1525人
●本社:大阪府大阪市西淀川区歌島4丁目6番5号
複数部門がかかわる経営戦略プロジェクトとしてスタート
プロジェクトの構想が始まったのは4年前の2017年。当時、育児休暇を取得していた男性社員は4%であった。
「子どもの健やかな成長を応援する会社の社員なのに、わが子との時間は十分にとれていない男性社員が多いことが分かりました。そこで、まず足元から行動変容を起こしていこうとなりました」
大きなミッションとして「事業を通じて社会に貢献する」ため、プロジェクトも経営戦略として位置付けられ、人事部や労政部などさまざまな部門からメンバーが結集。リーダーとして調整役を担う宮崎氏は、マーケティング部で商品開発に携わっていたが、「社会のための子育て支援」の必要性を訴えて現在の部署に異動となり、企画設計段階からかかわることとなった。
「いままで各部門で個別に取り組んでいた子育て支援に関して、横串を通した形で進めているのがこのプロジェクトです。さまざまな部署がかかわっていますが、メンバーは皆ミッションが分かっているので活動はスムーズです」
「Co =一緒に」という意味も踏まえて、プロジェクトは「Co 育てPROJECT」と命名された。コンセプトは、「生まれる前から(=妊娠期から)一緒に(=みんなで)子育て(= Co 育て)を!家族の幸福と子どもの健やかな成長を応援するプロジェクト」で「Communication(和気あいあい)、Corporation(上手に協力)、Coparenting(一緒に子育て)」という意味も含んでいる。
社内で準備を進めて、2019年2月に「Co 育てPROJECT」を始めることを対外的に告知。それに伴い人事制度も変更。この制度については後述するが「子育てに関する休暇制度」の枠を超え、目的を広げた社内人財制度に改定した。
プロジェクトの全体像としては、社内的には人事制度の改定を、対外的には「商品」「サービス」「産官連携の推進」という大きく3つの取り組みとなっている。
「Co 育て」を促す対外的な3つの取り組み
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