男性育休を1カ月必須化、取得率4%→100%に 江崎グリコ「Co 育てProject」が社内に浸透するまで(5/5 ページ)
2019年に江崎グリコで始動した「Co 育てPROJECT」。そのなかで、育児休暇を1カ月間取得することを必須化した新制度「Co 育てMonth」を設け、男性社員も100%の取得を実現した。とはいえ、1カ月も休む・休ませるのには、壁は高かったに違いない。どう進めたのだろうか。
「一つは、イントラネットで取得者紹介の際に、『こうしたらいいですよ』という発信はあえてせずに、『この人はこうしました』という事実のみを伝えたことが奏功したのかもしれません。そこから本人へも問合せがあり、次第に認知や意識が広がったのだと思います」
また、ガイドブックを配布するに当たっても工夫した。ガイドブックはイントラネットにデジタルブックとして掲載したが、それと同時に、子育てのドキュメンタリー映画のオンラインチケットも希望者に全社員に配布したのである。
「ただガイドブックをみてくださいといってもみてくれませんが、ドキュメンタリー映画を見れば、子育て中でない人も子育て環境が分かり、江崎グリコの取り組みはどうなっているのか?とガイドブック見てもらいやすい。また映画の感想をイントラにあげてもらうようお願いしたところ、たくさんのコメントが寄せられ、「Co育て休暇制度」への関心は高まったと感じています」
こうした工夫に加え、「双方でコミュニケーションを図っていくこと、そしてそのときに対象者の気持ちになることを大事にしています」という姿勢が、成果がみえつつある秘訣だろう。また、イクメンアワードの受賞など、外部からの評価を受けるようにしたことも、社員のモチベーションや自信につながっている。
事業を通じて社会に貢献する。その創業の精神が、確かに連綿と続いている江崎グリコ。多くの企業や自治体、団体が、同社に続くことを期待したい。
(取材・文 江頭紀子)
関連記事
- 花王に聞く、目標管理「OKR」の運用方法 ポイントは「ハイレベル目標」と「必達目標」の融合
花王が「OKR」を導入。それまでMBOをベースにした目標管理制度を長らく採用してきたが、方針を転換した。その背景は。具体的にどのような運用をしているのか。 - 新卒応募が57人→2000人以上に! 土屋鞄“次世代人事”のSNS活用×ファン作り
コロナ禍で採用活動に苦戦する企業も多い中、土屋鞄製造所の新卒採用が好調だ。2020年卒はたった57人の応募だったが、21年卒は2000人以上が応募と、エントリー数が約40倍に急増した。その秘訣を聞いた。 - 「一部の人だけテレワークは不公平」の声にどう対応した? ユニリーバの自由な働き方「WAA」が浸透した背景を探る
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスでは、2016年に人事制度「WAA」(Work from Anywhere and Anytime)を制定し、働く場所と時間を社員が選べる新しい働き方を取り入れた。しかし、工場やお客さま相談室など、一部の従業員は制度の対象外だった。「不公平」という声も上がる中で、どのように制度は浸透していったのか。島田由香さん(取締役人事総務本部長)に聞いた。 - 「正直、不安だった」 “ひとり人事”が入社直後、最初に取り組んだこと
2019年1月、note株式会社に「会社初の人事専任担当者」として入社した、北上あいさん。入社当時、採用活動は各事業を担当する役員が自ら採用計画を立てて実施していたという。そんな状況から、人材採用プロセス、評価制度などをどう整備していったのか。
© 人事実務