進化を続ける「VTuber」ビジネス、今どうなってるか知ってる?(2/3 ページ)
VTuberブームが巻き起こってから約3年。現在のシーンはどのようになっているのか、ライター・将来の終わりが分析する。
「コラボ」から生まれる「箱推し」
多くの配信者を抱えるにじさんじやホロライブといった事務所は、その多くの配信で複数人によるコラボ配信を行っている。FPSゲームやポケモン対戦などを複数チャンネル間で横断して行い、互いのファンにコラボレーションからくる面白さを訴える。また「ARK」や「マインクラフト」といった、特定ローカルサーバ内で各配信者が自由にオープンワールドゲームを楽しむことで、突発的に発生するコラボを視聴者は楽しむことができる
このようなコラボは最も簡単に合計視聴数を増やす手段だ。単体としてのファンに、コラボを入り口としてグループ全体の推しになってもらうことで、すなわちアイドルでいうところの「箱推し」へと変える。それによりチャンネル間の回遊を増やし、総合的な動画再生数の増加につなげることができる。
特ににじさんじの動きに顕著なところでは、昨今公式チャンネルでの「公式番組」を精力的にリリースしていることが挙げられる。共同テレビの制作協力を得てのゲームバラエティ「ヤシロ&ササキのレバガチャダイパン」(20年4月〜)の再開に加え、深夜番組をコンセプトにした「にじさんじのB級バラエティ(仮)」「クイズバラエティ『にじクイ』」(どちらも20年12月〜)などである。これらの番組にて業界最多レベルのVTuberを抱える強みをコラボレーションの多様さで見せることで、「箱」のファンを増やす。そうすることで、結果的にプラットフォームからの広告収入・企業からの広告案件のみではない収益の柱にファンを誘導することができる。ライブイベントへの集客だ。
広告以外の収益柱 ライブイベント
21年2月末、「にじさんじ Anniversary Festival 2021」が開催された。東京ビッグサイトを舞台とした初の大型フェスは、コロナウイルス感染拡大に伴いほとんどのライブステージは無観客・配信のみとなってしまったものの、20年5月にメジャーデビューを果たした「Rain Drops」を始めとした30人以上のライバーが参加。また「見たくなったタイミングからでもチケットを買える」というネット配信の強みを生かし、イベント以外にも多くの企画配信をYouTube上で無料配信。ライトなファンに対しても、「次はフルで楽しみたい」と思わせるような戦略で逆境をプロモーションに利用してみせた。
またホロライブも、同年2月にグループ全体ライブ「hololive IDOL PROJECT 1st Live.『Bloom,』を配信限定で実施。「歌ってみた」に代表されるようにアニソンやボーカロイド楽曲のカバーが中心であるVTuber業界において、全曲オリジナル楽曲でのライブを行ったのは非常に特徴的だ。また一期生のデビュー3周年となるこの5月には、hololive 1st Generation 3rd Anniversary LIVE「from 1st」が開催される。メイン収益は配信チケットで、緊急事態宣言延長により、完全オンラインライブに切り替わった。
オリジナル楽曲のリリース、ライブイベントの実施やグッズ販売というプラットフォームからの広告収入のみに頼らないビジネスモデル。これはキズナアイや輝夜月といった先駆者も試みていたことだが、VTuber視聴人口の増加に伴ってこの1年間で一気に加速したという印象だ。
関連記事
- コロナ禍の“映画鑑賞”どう変わる? 激動の「ストリーミング戦争」 Netflixは会員数500万人にほぼ倍増
ここ1年で人々の消費の形が変化し、特に映画の受容形態は大きく変わった。新作の公開の場としてストリーミングサービスが活用されている。 - VTuberがクラファンで1400万円の大型調達に成功! 仕掛け人が語る「熱い想い」
中京テレビの公式バーチャルYouTuberの大蔦エル氏がアンバサダーを務める「ナゴヤVTuber展」が、1438万円を超える大型調達を成立させる見込みである。正式な調達額が決定するのは9日後だが、本来の目標額が750万円であるため、クラウドファンディング自体はすでに成功している。 - 会社を辞めて田舎暮らしを始めた元編集者が“自信と安心感”を得た理由
講談社の新刊『漫画編集者が会社を辞めて田舎暮らしをしたら異世界だった件』の原作者&担当編集にインタビュー後編。 - 王者Netflixを倒すのは誰か?――動画配信各社の“戦国時代”、勝敗を徹底分析
戦国時代を迎えている動画配信サービス。首位のNetflixは果たして勝ち残れるか? 映像ビジネス報道の第一人者が各サービスを徹底分析。 - ソフトバンク、楽天モバイルと元社員に訴訟提起 1000億円規模の損害賠償請求権を主張
ソフトバンクは5月6日、民事訴訟を東京地方裁判所へ提起したと発表した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.