進化を続ける「VTuber」ビジネス、今どうなってるか知ってる?(3/3 ページ)
VTuberブームが巻き起こってから約3年。現在のシーンはどのようになっているのか、ライター・将来の終わりが分析する。
進む海外進出
ただ、これらの拡大にも限界がある。これらVTuberのメイン視聴者はアニメやゲームに強い関心のある20〜30代がメイン層となり、限られたパイの取り合いになってしまう。そこで20年前後より、大手の事務所は海外を見据えた動きを始めている。例として大きなところでは中国市場に対し、もとより日本のアニメ文化に関心のある層に向けてbilibili動画の公式チャンネルを作成して配信を行っている。
それ以外に関しても、にじさんじはインドネシア・韓国・インドにて独自のVTuberをデビューさせており、最近は日本を拠点とするライバーとのコラボも見られるようになってきた。ホロライブも同じく「ホロライブインドネシア」「ホロライブ中国」、そして英語圏での活動をメインとする「ホロライブEnglish」を始動している。
ただし「ホロライブ中国」は19年11月に全メンバーが卒業し事実上のプロジェクト凍結。「NIJISANJI IN」は21年4月にプロジェクト一時休止が発表され、同じくメンバーは全員が、卒業となった。文化圏・政治的状況が異なる国での活動はやはり難しいことがあるものの、今後もこのような海外への進出の動きが止まることはないだろう。
その成功のはじまりともいえる「ホロライブEnglish」。プロジェクト開始から半年ほどにもかかわらず全員のチャンネル登録者数が90万人を超えるなど、日本を拠点にする配信者と比較しても非常に大きな成功を遂げている。にじさんじも20年末には、英語圏向けライバーのオーディションを告知。今後はより広範囲的に、英語圏での市場獲得が始まっていくことになるだろう。
【追記】5月12日、主に英語を用いて活動するVTuberプロジェクト「NIJISANJI EN」から新ライバー3名のデビューが告知された。これまで日本で培ってきたオリジナル楽曲・グループ活動による人気拡大のノウハウを、英語圏にどこまで適用できるか注目したい。
市場の拡大と、企業案件の変化
これからも拡大が予想されるVTuber業界に対して、企業はどう付き合っていくべきか。VTuberの企業案件の多くを占めるゲームの認知拡大、インストール目的での配信依頼についてはこれからもメインストリームとなっていくだろう。特に最近見られる、「VTuberと一緒にクランを組んで遊べる」という視聴者参加型の企画では、同時接続者が多く発生する生放送配信者が非常に強い。
また弱点である「実態としての商品に触れる姿を写すことができない」点については、キャラクターIPとしてのVTuberの強みが発揮できるだろう。ホロライブの「カレーめしコラボ」、また複数のVTuberによる共同企画「VTuber酒蔵応援プロジェクト」など、CPG(飲食料消費財)とのプロモーションは今後も行われていくはずだ。
メインとなる特定視聴者層にヒットするサービスとしては、「おたくのやどかり」「いい部屋ネット(大東建託)」といった不動産賃貸・転居サービス、「タップル」などのマッチングアプリサービスからの広告案件が既に存在している。このようなWebサービスの紹介にはターゲット層とマッチさえしていれば、適しているといえるだろう。
アニメ的なキャラクター性と人格を併せ持つ強みを生かしながら、技術の進歩とともにその可能性も広がっていくVTuber。これからも目が離せない業界である。ああ、また配信が始まってしまう……。
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