リモート中「サボってないか監視する上司」の、救いがたい勘違い:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/3 ページ)
リモートワーク中、PCのモニタリングなど「監視システム」を導入する企業は少なくない。「過重労働にならないように」「生産性が低下しないように」などの言い訳で、部下を監視しようとする上司や経営層に欠けている視点とは。
リモート勤務で信頼を築くには、まずは上司自身が「あなたのことを信頼している」というメッセージをメンバーに送ることです。
例えば、リモートでもランチやお茶の時間をつくり、社員に能力発揮の機会をつくる。どんな内容でもいいので、社員が自由にプレゼンする機会を作る。あるいは、感情を共有する時間として、最近みた映画とか、読んだ本とかを紹介する。
一見「無駄」と思われることを、つながるための大切な無駄と考え、一人の「人」としてふるまう時間と機会をつくることは、ソーシャル・キャピタルを豊かにする大切な行為です。
逆に、監視システムでモニタリングされると、社員は「上司の顔色」ばかりを気にし、自分の能力やスキルを向上させるのではなく、上司に評価されそうなことに労力を注ぐことになることでしょう。
また、社員からの信頼を得るには、上司自身も信頼されるに値する言動をとることが肝心です。
どうすれば信頼できる人間と思われるか? それは「自分が他者にやってほしい」と思う言動をとればいいだけです。
私たちが働くのは、自分の能力を発揮したり、高い報酬を得るためだけではありません。自分の成長もさることながら、他者とのつながりも求めています。どんなに「俺は会社になんて何も期待してない。金のためだけ」と豪語する人でも、一緒に同じ方向に向かって働く仲間がいることで「自分の居場所」だと感じられます。他者とつながっていることで、私たちは自分の存在意義を見いだします。
ただでさえリモート環境では、そういったつながる機会が激減してしまいます。上司は部下を監視するのではなく、つながる努力をすることが「お仕事」です!
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)がある。
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