シリーズハイブリッド、LCAを考えると現時点でベストな選択:高根英幸 「クルマのミライ」(4/4 ページ)
ハイブリッドの駆動方式は3種類に大別される。その中で、日本で主流にすべきはシリーズハイブリッドだと断言できる。トヨタのTHSは素晴らしいシステムだが、制御が複雑でノウハウの塊ともいえるだけに、トヨタ1社でスケールメリットがあるからビジネスモデルが成り立つ(といってもトヨタも利益を出すまでは相当な年月が掛かっているが)ものだからだ。
バッテリーの循環社会をよりシンプルで効率的なものに
そうなるとさらに次の段階では、バッテリーのシェアリングビジネスの可能性が生まれる。タクシーやカーシェアのEV、個人所有のEVもバッテリー規格を統一することで、充電スタンドだけでなく、バッテリー交換スタンドを実現することができるようになる。
シリーズハイブリッド自体にはバッテリー交換方式を採用することの意味はないが、バッテリーパックを共通化することは、前述の通り生産時やリサイクル時のコストダウンにつながり、車両価格を引き下げることにつながる。
小さなバッテリーパックでクルマを構成できれば、バッテリーの材料調達リスクや車両価格を抑えることにつながる。日本国内での生産でも採算ベースに乗せることが可能となるだろう。
ただしこれを実現するには、現在の日産ノートより格段に環境性能を高めなければならない。それには現在の水準より格段に高効率で低コストなハイブリッドシステムを確立する必要がある。そのためにも次世代の高性能二次電池の実現が不可欠だ。
ここでいう次世代電池とはリチウムイオン全固体電池だけではなく、リチウムを使わないナトリウムイオンやマグネシウムイオンなどを使ったものまで見込んだものだ。ナトリウムやマグネシウムはリチウムほどイオン化傾向(電気をやり取りする力)は強くないが、材料は海水から精製できるのだから、日本は自国で原料を調達できるようになる。
したがって、こうした研究開発の分野で日本はもっと開発のスピードを高める努力すべきだ。政府ができることとして補助金を手厚くするなど、最先端分野の研究職につく日本人を、もっと積極的にサポートする必要があるのではないだろうか。
次世代電池を実用化して電源構成が整い、グリーン電力で充電できる環境が整えばEVのウエイトを増やせばいい。おそらくそれはソーラーパネルのさらなる効率化や地熱発電、潮流発電などの再生可能エネルギーによるものとなるだろう。
そして次世代電池の開発を急ぎ、実現を早めることこそ、エンジンも活用され日本の工業技術がまたも世界の自動車市場で優位性を維持する原動力になるのだ。
筆者プロフィール:高根英幸
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmediaビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。近著に「ロードバイクの素材と構造の進化(グランプリ出版刊)、「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。企業向けやシニア向けのドライバー研修事業を行う「ショーファーデプト」でチーフインストラクターも務める。
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